「家事をやりきる」ということが長い間、まったくわからなかった。というかずっと、そんなことはできるはずないとあきらめきっていた。
例えば台所。
台所って何はともあれ料理をするところ。それがまず大変なわけで、ようやく完成してニコニコ食べてホッと一息となるはずが、たちまちその汚れた皿は誰が洗うんだ問題が発生。これはつらい。とくに、1杯やった後だったりしたら本当に悲しい。でもいつかはやらなきゃならぬゆえエイと腰を上げ、皿や重たい鍋やまな板などの調理道具も頑張って洗い、この段階でもう「真っ白な灰」。拭くことも棚に戻すこともほぼできないことが常態化していた。
常識を覆すスゴイ人物が現れた
ところが、そんな私の「常識」を根底から覆すスゴイ人物が現れたのである。
それは、乳飲み子を抱えまったく言葉の通じないパリに住むという非常事態に見舞われた姉宅で出会った、韓国人のお手伝いさん。夏休みに行ったときに目撃したその仕事ぶりが本当にスーパーで、2時間ほどの間に何種類ものおかずやおかずの素を怒濤のごとく作りまくり、それだけでも十分すごいんだが、さらにビックリしたのは彼女の仕事の最後が必ず「台所をピカピカにする」だったこと。皿やら鍋やらを片付けた後、そこらじゅうに洗剤をふりかけて、作業台からシンクから床から隅々までゴシゴシと磨き上げる。そこでようやく「はい終了!」となるのであった。
まさに目からウロコ。え、そんな世界があったのと。確かに嵐のごとく働きまくった彼女が帰っていった後の台所は本当に輝いていて、来る前よりずっと美しくなっていた。
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