チャンスはピンチの後に訪れるのも、また人生のセオリー。
「今、振り返ってみても、あれは人生最大のターニングポイントです」と語るのは、韓国留学からの帰国後、思うような仕事がなく苦しんでいた時期に舞い込んだ、NHKのキャスターオーディションだ。
当時、関西で人気だった伝統芸能の人間国宝の方々を取り上げる番組『4時です 上方倶楽部』のアシスタントキャスターのオーディションに受かったのだ。
「1000人以上の応募者の中から選んでいただきました。韓流ドラマ『冬のソナタ』が日本で初めて放映され始めた頃で、私が韓国人であることや留学経験に注目していただけたのです。日韓の架け橋になりたい思いが強かったので心の底から嬉しかったですね」
必死で勉強し、次第にスタッフや視聴者の信頼を獲得
採用された当初は、初めての経験の連続でミスも連発、苦しい思いをしていた。アシスタントキャスターとはいえ、プロデューサーの要求は相当に高いものだった。
「毎週、ゲストの芸能人の経歴や作品を完璧に学んでおくことはもちろん、彼らをおもてなしするための特技を身につけてくださいと言われました。私の前のアシスタントの方はお茶の資格を持っていて、ゲストに特別なお茶をもてなしていました。私は、ゲストの方の芸にふさわしい香りを選んでプレゼントをすることになって……。アロマテラピーの資格でも最難関のNARDアロマアドバイザーの資格を短期間で取得することに。毎日早朝入りでリハーサル。夕方生放送後は反省会。帯の番組をこなしながらどうにか睡眠を削って必死で勉強しましたね」
ありとあらゆる難題を真摯にクリアしていった彼女は、次第にスタッフや視聴者の信頼を獲得。
「この番組からはたくさんのギフトをいただきました。文化や社会などのことも学べた上に、ただのモデル・タレントではなく、自分の意見を言えるコメンテーターとしての素地ができました。それから稀有な人脈も。伝統芸能の皆さんに携わるお仕事も、これを機にいただけるようになりました」
壁を1つ越えるたびに、稀有な人脈や新しい仕事が増えていく。そこで人より多くのものを得ているのは、彼女がそこにそれだけの労力をかけているからだ。
目の前のアンミカは、テレビの印象と変わらず、明るくエネルギッシュで、ユーモアと人情味に溢れている。でも、それだけではない。
仕事においては、おそらく、とても厳しい人に違いない。
取材当日、「前の仕事が早く終わり、予定より20分ほど早く到着できそうだから、少しでも長くお話しできれば」という連絡がマネージャーを介して、1時間前に届いた。
日々、分刻みのスケジュールが続く中、「少しでも長くインタビューしたい」というこちらの求めに応じようと尽くし、1分1秒も無駄にしない姿勢が垣間見えた。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら