ロシア、イラン、エジプト、サウジアラビアなど、アメリカと対抗、もしくは、距離を置いているSCOの「地域大国」群が、中国の力強い「補完勢力」となっています。
さらにSCO加盟国を世界地図でみると、中国本土の北・西・南西側をカバーしており、中国はこれら方面の安全保障に過度な力を割かずに済みます。
インドは国境紛争もあり、中国にとって必ずしも、安心できる相手ではありません。しかし、インド経済の中国依存度が高まっていることに加え、地域連携強化を目的としたSCOが両国の対立激化の歯止めになるとの期待もあります。
中国は太平洋側の防衛に集中できる
四方を敵対国に囲まれていると国境防衛などに大きな力を削がれますが、中国は、SCOによって内陸の防衛を省力化でき、その力を、海軍力強化など、アメリカを意識した太平洋側により集中できます。こうした地政学上の利点も大きいことから、中国は今後もSCOの拡大・強化に力を入れていくでしょう。
SCO以外でも、最近は、国際社会における中国の存在感が高まっています。冒頭で触れた中国の仲介によるサウジアラビアとイランの国交正常化は、その象徴的な事例です。イランはアメリカと対立し、サウジアラビアも、近年、アメリカに距離を置きつつある中、この橋渡しをアメリカが行うことは難しく、その間隙を縫って、中国が表舞台に立ったわけです。
さらにこの1カ月間だけでも、習近平国家主席のモスクワ訪問の他、スペインのサンチェス首相、シンガポールのリー・シェンロン首相、マレーシアのアンワル首相、フランスのマクロン大統領とフォンデアライエン欧州委員長が相次いで北京を訪問しています。
北京での各首脳会談では、ウクライナ問題や経済連携について話し合われたようですが、ウクライナ紛争解決については、ロシア寄りの中国に対する不信感は依然強いものの、それでも中国を頼りにせざるを得ないといった国際社会の声は高まりつつあります。
アメリカはサウジアラビアとイランの国交正常化に続き、ここで中国に調停の手柄をたてられれば面目丸つぶれなので、中国の調停を阻止するか、もしくは自ら調停するしかありません。
しかし、武器供与などを含め、ウクライナを全面的に支援してきたこれまでの経緯からも、いきなり調停者になることは難しく、アメリカにはとりあえず中国による調停阻止しかありません。
結果として、「アメリカが前向きに動かないことによる紛争の長期化」が、さらに国際社会のアメリカ離れを進める可能性もあります。中国による調停が実現するかどうかは別としても、こうしたアメリカの動きも見ながら、習近平政権の各方面での積極外交は、ますます活発化することが予想されます。
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