最近、王毅中国外相の強硬発言が際立って目立つようになってきた。
同氏は誰もが知る知日派であり、駐日大使も務めたことがある。1980年代の中葉、筆者が在中国日本大使館の政治部長であったときに王毅は日本課長であり、同氏が順調に昇進し、今や中国の外相として八面六臂の大活躍をしていることを、尊敬の念をもって見守ってきた。
しかし、その強硬な姿勢が日本に向けられているとなると、昔の思い出に浸るだけではすまなくなる。
「日本はケチなソロバンをはじき、小細工をした」
新聞報道によると、中国外交部は去る4月のG7外相広島会合のころから対日批判を強めていた。5月27日に終わったG7首脳会議については、「日本は南シナ海問題を大げさに騒ぎ、緊張を宣伝している。G7は世界経済を論議する場なのに、日本はそれを利用した。徹底的に反対する」と論評した。日本経済新聞6月1日付によれば、中国はさらに「日本はそれを利用し、ケチなソロバンをはじき、小細工をした」とも述べており、同紙の中沢克二編集委員は「まるで北朝鮮の宣伝放送なのかと見まごう口調」と評している。
このような論評は国家間の儀礼を無視した無礼なものだ。王毅外相は表には出ていなかったが、外交の責任者としてこうした論評を承認したのは間違いない。
王毅外相は4月30日、北京で開かれた日中外相会談でも会談の冒頭で「誠意があるなら歓迎する」と吐き捨てたという。このような発言は外相同士の会談では異例であり、けんか腰とも言えるくらい挑発的だ。
G7首脳会議に際し、王毅外相はさらに行動を起こし、26日には北京で記者会見を開いてG20の意義を強調した。「G20の100日前」という説明であったが、G7首脳会議にぶつけ、注意をそらす意図であったのはだれの目にも明らかだった。
この王毅外相の強硬姿勢は日本だけに向けられているわけではない。
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