じわり「親中」を増やす中国ユーラシア外交の深謀 サウジ、イランだけでなく欧州勢も北京もうで

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イランとサウジアラビアは3月10日、中国の仲介によって7年ぶりに外交関係を正常化させることに合意。北京発のニュースは世界を驚かせた(写真:Getty Images)

中国の仲介により、宿敵イランとの国交正常化を果たしたサウジアラビアが、今度は中国が主導する「上海協力機構(Shanghai Cooperation Organization、以下SCO)」への参加を決定しました。

SCOは、2001年に、中国、ロシア、カザフスタン、キルギス、タジキスタン、ウズベキスタンの6カ国により、地域安全保障や経済連携を目的として発足した「地域連合」ですが、実質的には、アメリカへの対抗を意識した中国とロシアの連携強化を意図したものでした。

現在はインドとパキスタンを加えた正メンバー8カ国のほか、イランなどの「オブザーバー」4カ国、トルコやエジプトに、今回加わったサウジアラビアを含む「対話パートナー」9カ国などで構成され、存在感を高めています。事務局は北京に置かれており、特に近年は、中国主導の色が濃くなっています。

いまやユーラシア大陸の半分強をカバー

SCOの発展には、2つのステップがありました。まず、2017年のインド・パキスタンの加盟です。この両地域大国の加盟により、SCOは、中国とロシアの連携強化の枠組みから、ユーラシア大陸の半分強をカバーする「ユーラシア地域連合」とも言える存在となりました。2つ目は、2021年から今日に至る中東主要国の参加です。

この間、イラン、エジプトが参加し、仕上げが今回のサウジアラビアです。中東主要国はいずれも、正メンバーの前段階にあたる「オブザーバー」や「対話パートナー」のステイタスですが、将来的には、正メンバーとして正式加盟すると思われます。

SCOは、中国にとって、アメリカとの対抗上、力強い助けになっています。G7など西側先進国はいませんし、日米豪とともに「クワッド」に参加しているインドは正メンバー、また、NATO加盟国のトルコが対話パートナーとして参加してますが、両国とも、アメリカ一辺倒という国ではありません。

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