子持ちがシリコンバレーで働きにくいワケ ヤフーでは全社員の在宅勤務が禁止に
シリコンバレーのIT企業では、社内でドライクリーニングやマッサージ、ヘアカットが無料なのは今や当たり前。しかし、充実した福利厚生の一方で、ほかの業界よりはるかに働きづらいと感じる社員もいる──それは小さな子どもを持つ親だ。
フェイスブックでは徹夜でハッカソンを行い、グーグルでは週末にレーザータグ(光線銃サバイバルゲーム)の大会を開く。育児休暇の制度がまったくないスタートアップも多く、社内で初めて親になった社員が、会社に制度を作ってほしいと訴える。
ヤフーのマリッサ・メイヤーCEOは自ら宣言したとおり、出産から2週間で職場に復帰。その後、ヤフーは全社員の在宅勤務を禁止した。20人ほどのチームのなかで、小さな子どもがいるのは自分だけという場合も珍しくないと、子育てと仕事を両立させている人々は語る。
妊娠や産休を理由に昇進を認められなかった例も
このところ、シリコンバレーで社員の子育てをめぐる問題が改めて注目されている。有力ベンチャーキャピタルのクライナー・パーキンス・コーフィールド・アンド・バイヤーズの性差別をめぐる裁判で、2人の元パートナーが、妊娠や産休を理由に昇進を認められなかったと証言した。フェイスブックを提訴した元技術系社員は、子どもの学校のボランティア活動に参加するため、会社で認められている月1日の休暇を取った際に、上司から叱責されたと主張した。マイクロソフトは業務委託先の業者に、病欠を有給として認める制度を義務づける方針を発表した。
「(IT業界の)文化は必ずしも家族に優しくないが、その点がなかなか理解されていない」と、フェイスブックの元CTOで、クラウドベースの文書作成アプリを提供するQuip(クイップ)の共同創設者、ブレット・テイラーは言う。
テクノロジーだけでなく職場環境でも最前線を走るシリコンバレーで、子どもを持つ親がこれだけ厳しい立場に置かれているという現実は、米経済の厄介な問題を浮き彫りにしている。米国は裕福な国のなかでも、とりわけ現代の家族生活への対応が遅れているのだ。