子持ちがシリコンバレーで働きにくいワケ ヤフーでは全社員の在宅勤務が禁止に
スキルソンは、出張で飛行機の搭乗距離が年間約50万キロに及び、息子が緊急手術を受けたときもそばにいなかった。「正直なところ、人間らしさが抜け落ちていた」
「子供がいる人には別の優先順位がある」と、IT企業のエグゼクティブは語る。
「スタートアップは、自分たちと同じ優先順位を持たない人に対し、とても冷酷になるときがある」
「若者は人生がシンプルだ」と、フェイスブックのマーク・ザッカーバーグCEOは2007年に未来の起業家を前に語っている。「僕たちは車を持っていない。家族もいないだろう。人生がシンプルなら重要なことに集中できる」。ザッカーバーグは当時23歳だった。
仕事も家庭も両立させる
しかし、シリコンバレーも歳を重ね、20代の起業家が30代の親になって、文化が変わり始めている。家族に優しい職場環境が、採用戦略の一貫になっているのだ。
住宅リフォームのスタートアップ、ハッピー・ホームは、子どもを持つ社員の採用に力を入れている。「シリコンバレーで最も適性と才能と情熱に恵まれている人たちが、スタートアップの『文化にそぐわない』という理由で見過ごされがちだ。年を取りすぎている、子育てを重視しすぎる、女性的すぎる、自分たちと違いすぎる、という理由で」と、共同創業者のダグ・ルドローは言う。
クイップの共同創業者はそれぞれが親でもあり、午後5時半には退社する。ブレット・テイラーも、遅くまで働きたいときも自宅に帰り、ほかの社員に残業しなければならないという義務感を与えないようにしている。
「私たちがビジョナリーなのではない。歳を取っただけさ。ほかの会社で職場の文化に疑問を抱いてきた人々は、(クイップの職場環境に)大いに貢献している」
歳を取りつつあるシリコンバレーは、米国のほかの業界に近づきつつあるのだろう。社員にはそれぞれ家族がいるのだ。不可能を可能にする若さあふれる楽観主義を維持しつつ、仕事をしながら家族生活を営むことが現実的であることを証明する。それがシリコンバレーの新たな課題だ。
(執筆:CLAIRE CAIN MILLER、翻訳:矢羽野薫)
(c) 2015 New York Times News Service
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