また、骨粗鬆症の高齢者に多い大腿骨頸部骨折は、手術が第一に選択される。保存療法で長期間歩かない状態が続くと、寝たきりになるリスクが高いためだ。
骨折の手術では、皮膚を切開し、骨折した場所に金属の板(プレート、下の写真)を沿わせて、ネジで固定する方法が行われている。「この20年くらいで骨折の手術方法は進化し、小さな切開ですむようになったほか、骨がつくまでの期間も短くなっています」と松井医師。
手術の進化は、主に使用するプレートの進歩によるものだ。
小さい切開部でもプレートを挿入しやすくなったため、傷の回復が早く、術後の痛みも軽くてすむようになった。さらにプレートがネジと一体化しやすく、より固定性が上がっていることから、治りも早くなっている。
「従来は骨に沿わせたプレートに穴が開いていて、そこにネジを打って固定していました。骨はもともとカーブしているものですが、固定性を高めるためにネジを強く締めるほど、本来カーブしている骨がプレートに合わせてまっすぐになってしまうのが難点でした」
「しかし現在のプレートは穴にネジ切り(ネジを固定するためのギザギザ)があるため、ネジと一体化しやすく、骨の自然なカーブを保ったまま固定性も高めることができているのです」
と松井医師。
画像検査は○、金属探知機は?
現在日本で使用されているプレートのほとんどは、チタン製。生体となじみやすいため、必ずしも除去する必要はない。プレートが入ったままMRI(磁気共鳴画像)検査を受けることも可能だ。ただし、飛行機に搭乗する際、金属探知機に反応してしまうケースがあるので、診断書やレントゲン写真のコピーなどを用意しておくとスムーズだ。
部位によっては日常生活での動きに支障が出るため、術後1年くらいで除去する手術を行うこともある。とくに肘は皮膚のすぐ下に骨があり、テーブルなどに肘をつくたびにプレートが当たって痛みが出る。
手術をした場合の入院期間は、数日から1カ月程度で部位や程度によって大きく異なる。術後1~2週間後、傷が治っていれば、骨の接着状態に合わせて徐々に負荷をかけていく。
術後の回復を手助けする方法として、最近では、「超音波骨折治療法」という方法も登場している。
これは、専用の治療機器で毎日20分間、骨折部に低出力の超音波を当てるという方法で、治るまでの期間を短縮する効果がある。基本的には術後3カ月の使用に対し、健康保険が適用される。毎日実施するため、退院後は機器をレンタルして、自宅で治療を続ける。
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