侍ジャパンは最高の「心理的安全性」の教科書だ WBC優勝から学ぶ「チームで結果を出す」秘訣

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チームの心理的安全性を高めるために、「構造」と並んで必要なのが「対話」です。示された目標を達成するために、メンバーが臆することなく建設的な意見を言い合えるチームは、成果を出すこともできるし、成長することもできます。

その点、侍ジャパンは、テレビのニュースなどを見ていても、対話の多いチームだった印象があります。ダルビッシュ有選手も取材で、「2009年のWBCでは、当時の先輩たちは自分のことだけやっていた。今のチームはみんなとコミュニケーションを取りながらやっている」といった趣旨のことを話しています。また、今永昇太選手も投手陣の団結について「家族のような存在」「冗談も言い合える」「時には弱さを見せ合える関係性」であると取材に答えていました。

彼らは一流のプロ選手なので、たとえチームメイトであろうと「弱さは見せたくない」「見せられない」と思っても不思議ではありません。でも、侍ジャパンというチームでは、自分の弱さを見せても馬鹿にされたりしない、むしろ率直な対話をすることで、お互いを高め合い、チームの勝利に貢献できる。そういう環境が作られていたから、チームの中で対話が生まれ、それがチームの強さにつながっていったのだと考えます。

大谷選手も認める「対話型リーダー」

対話型のチームは、自然にできるわけではありません。「チームで対話を増やしたいけれど、みんな、あまり話そうとしない」とお困りのマネジャーもいることでしょう。

チームや組織のメンバー間の対話を活発にするためにはどうすればいいのか。ここで鍵となるのはマネジャーの存在です。「みんな、対話してね」と言うだけではなく、自ら率先垂範でメンバーに積極的に声をかけ「このチームは対話型のチームだ」と理解させ、浸透させる必要があるのです。

その点、栗山監督は、まさしく対話型のリーダーと言えそうです。彼は日本ハムの監督時代から、若手からベテランまで、毎日のように隙あらば一対一で話をしようと試みる監督として有名でした。今回の侍ジャパンでも、大谷翔平選手が「(栗山監督は)一人ひとりの選手と対話するタイプ」「選手は何の不安もなくプレイできるんじゃないか」といったコメントをされていました。

こうしたマネジャーの積極的な対話が、チームの対話文化を創り上げていくのだと思います。世のビジネスパーソンの方々も、もし「うちのチームには対話が少ない」と思ったら、まずは自分から、積極的に話しかけてみてはいかがでしょうか。

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