一方の家康は、信玄とはいずれ戦うことを予感していたに違いない。今度は家康から仕掛けている。追い詰められていた氏真と和睦することを勝手に決意。さらに北条氏と連携して、信玄を孤立させようとしたのだ。
慎重だからこそ先に動いた
『徳川実紀』には、窮地に陥った氏真に対して、家康はこんな言葉をかけたとある。
「私が幼いころから今川義元に後見されたよしみをどうして忘れようか」
家康もかなり氏真を追い詰めていたはずだが……。家康びいきの『徳川実紀』なので、このあたりは話半分としても、家康が信玄相手にもひるむことなく、果敢に勝負を仕掛けていたことがわかる。
「待って耐え忍んだ」どころか、「慎重だからこそ先に動いた」家康。もちろん、信玄も黙ってはいない。家康と信玄は本格的に対立を深めていくことになった。
【参考文献】
大久保彦左衛門、小林賢章訳『現代語訳 三河物語』(ちくま学芸文庫)
大石学、小宮山敏和、野口朋隆、佐藤宏之編『家康公伝<1> 関ヶ原の勝利(現代語訳徳川実紀)』(吉川弘文館)
桑田忠親『家康の手紙』 (文春文庫)
宇野鎭夫訳『松平氏由緒書 : 松平太郎左衛門家口伝』(松平親氏公顕彰会)
平野明夫『三河 松平一族』(新人物往来社)
所理喜夫『徳川将軍権力の構造』(吉川弘文館)
本多隆成『定本 徳川家康』(吉川弘文館)
柴裕之『青年家康 松平元康の実像』(角川選書)
二木謙一『徳川家康』(ちくま新書)
日本史史料研究会監修、平野明夫編『家康研究の最前線』 (歴史新書y)
菊地浩之『徳川家臣団の謎』(角川選書)
大石泰史『今川氏滅亡』(角川選書)
佐藤正英『甲陽軍鑑』(ちくま学芸文庫)
平山優『武田氏滅亡』(角川選書)
笹本正治『武田信玄 伝説的英雄像からの脱却』(中公新書)
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