マスクの着用も個人の判断になり、いよいよ“アフターコロナ”も見えてきました。明るいニュースと感じる一方で、戸惑いを覚えている方も意外と多いように感じます。コロナ禍で数年続いた習慣を変えるのは、人によってはストレスになるようです。マスクを外したくないという方は、意外と多くいらっしゃいます。
マスクを外すのが「怖い」
かつて、こんな症例を経験しました。
10年以上前、アトピー性皮膚炎で相談にいらした大学生の患者さんですが、いつもマスクをしていました。「問診票には書いていないけれど、アレルギー性鼻炎や花粉症ですか?」と質問したところ、意外な答えが返ってきました。
「人と話すのが面倒くさくて大学でマスクをつけていたら、話しかけてくる人が少なくなるのに気づいて。いつも着けていたら、外すのが怖くなってしまった。それ以来、人前ではマスクを着けることが多くなりました」
このようなマスクの使い方があるのだなと、そのときは驚きましたが、今まさにそのような心境の方が多いのかもしれません。
新しい環境に慣れるのは、大きなエネルギーを要します。コロナ禍ではテレワーク、オンライン授業など、環境の変化による心身の不調を訴えてやってくる患者さんが増えました。
そしてコロナ禍での環境にやっと慣れたと思ったら、今度は戻さなくてはならない――。何より春は入学や卒業、就職や転勤など、学校や職場などの環境が大きく変わる時期でもあり、それが心身に大きな負担になることもあります。
漢方の根底の考え方に「心身一如(しんしんいちにょ)」というものがあります。言葉通り、心と体は一体で、精神活動は臓腑(ぞうふ)と深い関わりを持つという考え方です。心に大きなストレスがかかると、それは体の変調となって表れ、同様に、体に大きな負担がかかると、それは精神面のダメージへとつながる、というわけです。
西洋医学では体の病気は内科や外科など、その症状に対応する臓器・器官の診療科、心の病は精神科や心療内科で治療しますが、心身を分断して考えないのが、漢方の大きな特徴です。
実際、漢方では、どのような感情やストレスがどの臓腑に負担をかけ、結果的にどんな症状につながるのか、「五行説」で説明できます。
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