春に増える「環境変化ストレス」を緩和する養生法 仕事中にできるツボ押しと漢方薬が強い味方

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とくに春に不安定になりやすいのは、「肝」です。

漢方の古典『黄帝内経(こうていだいけい)』には、春は植物が芽吹くように、人も生きるべきであるとしています。春はのびのびとゆったりした気持ちや、なおかつワクワクした気持ちで、新しいことにチャレンジしたり、スタートしたりするのに最適な季節です。

しかし、前述したように五臓が整っていないと、肝はストレスをコントロールできず、さまざまな不調が表れることになります。肝の養生で重要なのは休息と食事です。新しい環境に慣れるだけで心身は精一杯であることを自覚し、普段以上に睡眠や休憩をきちんととることを心がけるとよいでしょう。

現代人のストレスに「抑肝散」

こんな事例を1つ紹介します。

19歳の女性(大学生) は、オンライン授業が始まってからよく眠れず、不安感が強くなり、動悸を感じることが増えました。内科で診てもらっても異常はなく、念のためにと胃の薬を処方されましたが、症状が改善する兆しは見られません。さらに内科から紹介された心療内科で抗うつ薬を服用し始めたところ、改善しないだけでなく、気分がより不安定になってしまったといいます。

どうしてよいかわからず症状をネット検索したところ、「漢方がよいのではないか」と思いいたったそうです。

「なぜそんなにオンライン授業がつらいのか」と彼女に聞いてみると、「教師やクラスメイトから画面越しに監視されているような気になること」「固まったような姿勢でずっと授業を受けていること」がつらいと話します。体を触ってみると、肩から腰のあたりが板のように固く凝っていました。実際、オンライン授業が終わる頃にはその首や肩の凝りで呼吸が苦しく、過呼吸になることもあるようです。

話している途中で涙があふれてきて、問診を中断してしまう場面もありました。スイーツを食べるといやされるので、授業が終わる度に食べていた結果、1年間で5kgも体重が増えてしまったそうです。肝はアルコールや甘いものの取り過ぎや過食でも疲弊します。

これらの症状がある場合、西洋医学的には不眠や不安は精神科や心療内科、肩や背中の凝りは整形外科、胃腸症状は内科と、それぞれの診療科を受診することになります。しかし、漢方では「肝の病」ということになり、1つの処方ですみます。

女性は漢方薬を服用したその日の晩からよく眠れるようになり、オンライン授業も落ち着いて受けられるように。肩こりがなくなったことで呼吸が楽になり、気持ちが前向きになったことでスイーツの過食もなくなり、増えた5kgの体重を3カ月かけて戻すこともできたそうです。

彼女に処方したのが、漢方薬の抑肝散(よくかんさん)です。

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