漢方の根本思想である五行説は、すべての事柄を自然界の5つの要素である「木、火、土、金、水」に当てはめて考えます。人もまた自然界の一部ですので、人体も五行説に当てはめることができ、五臓(肝、心、脾、肺、腎)と五腑(胆、小腸、胃、大腸、膀胱)が、順番に五行(木、火、土、金、水)に対応しています。
肝、心……といっても、西洋医学でいう肝臓や心臓などの臓器とはイコールでなく、漢方ではより広い機能まで含めたものと考えます。例えば、肝は肝臓のみならず、自律神経系まで含めた概念です。
ストレスを調整するのは「肝」
私たちの心身が新しい環境に適応するとき、五臓は次のように働きます。
まず、新しい環境であることを察知したときに働くのは、「肝」です。肝はストレスのコントロールに大きな役割を担います。
新しい環境は、それがたとえ結婚や昇進といったうれしいことであっても、ストレスや不安が伴います。「肝(キモ)が据わっている」というのは、この肝の働きがしっかりしていることを意味し、そのような人は多少の環境変化には動じません。
そして物事を決断するのは、肝の兄弟関係にある「胆」です。決断できない、メニューがなかなか決められない、着ていく洋服を選べない……というときは、胆が弱っていると考えられます。
どう行動するか、じっくり思慮して長期的な展望をするのは「脾」の働きです。脾とは胃腸の消化吸収機能を指しますが、これがきちんと働かないと「思」、つまり思慮するという働きが落ちます。また、胃腸は単に飲食物を消化吸収するだけでなく、生命エネルギーである「気」を作る役割も担っています。脾が弱ると気が不足した「気虚」の状態になり、やる気が出ない、だるい、などの症状にもつながります。
そして 恐れることなく実行し、やり遂げるのは「腎」の力です。いろいろ手をつけても継続しないのは、腎が弱っているということです。
「気」は呼吸によって「肺」から取り込まれ、飲食物からの気と合わさって全身を巡ります。「心」は、取り込んだ気を全身に巡らします。
このように、これらの臓腑がすべて整っていないと、新しいことにチャレンジできませんし、新しい環境に適応することができず、体調を崩してしまうのです。
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