遠藤:デンソーの「現場を重視する文化」の集大成といえるのが、昨年12月に本社内に設置された「モノづくり棟」ですね。私も初めて見学させていただいたとき、「ここまでするのか」とたいへん驚きました。
加藤:「モノづくり棟」では、製品開発の「技術者」と、それを実際の形にする「技能者」1600人が、同じひとつのビルに集結して働いています。
遠藤:技術者と技能者の方々が一体となって試作などに取り組んでいる光景に、「現場が主役」という経営トップの覚悟の大きさを感じました。同じ場所、同じ空間で働いているからこそ、技術者がふと「これを形にできないか?」と思ったら、近くにいる技能者に頼めるわけですね。
加藤:ええ。すると、すぐに原寸大模型にしてくれます。もし「別会社」になっていたら、そこまでの「現場の機動力」は実現できなかったかもしれません。
遠藤:現場の機動力と柔軟性を高めるためには、「物理的な距離」というのは非常に重要な要素ですね。
物理的「距離の近さ」の大切さ
加藤:どうしても組織が大きくなると、関連部署が分散化して、技術者と技能者の距離が遠くなってしまいがちです。すると、組織の生産性だけでなく、仕事の全体像が見えないことで、「仕事の楽しさ」も実感できにくくなると感じています。
遠藤:先日、「無印良品」ブランドを展開する良品計画の金井政明社長と一緒に、「モノづくり棟」を見学させていただきました。金井社長は「ここで働く人たちは、『ワーク(仕事)』じゃなくて『プレイ(遊び)』ですね」と、彼独特の言い回しで表現していました。「これなら、仕事が楽しくて仕方ないはずだ」と。
加藤:うまいこと、言われますね。私が若い頃は、ベテラン技能者が製品開発の若手に、「こんなもん作れるか!」と、よく怒鳴っていました。そういうやり取りを通して、人は育つのだと思います。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら