つい最近、モスクワに行ってきた。主な目的は、ロシアの鉱山関連の会議出席だが、昔からのロシア人やウクライナ人の友人たちと意見交換をしてきた。昨年末からの欧米のロシアへの制裁がどんな影響が出ているのか、現場で見たいので短期間だったが多くの関係先と話をしてきた。今回から3回にわたって、「ロシア現地報告」をお届けしたい。
「三重苦」のロシア経済、弱いはずの日本円もウハウハ
ひとことで言えば、現在のロシア経済はリーマンショック以来の最大の経済危機で「三重苦」に喘(あえ)いでいる。
三重苦とは通貨の暴落と金利の高騰と欧米の経済制裁だ。ロシア中央銀行は、ルーブル通貨の価値を元に復元する(ルーブル高に誘導する為に)政策金利を大幅に引き上げた。
その結果、国内金利が急騰、実体経済をクラッシュさせる心配もでている。もちろん、一般の中小企業は厳しい。銀行金利が高くなると調達金利が上がり、中小企業の資金繰りは悪化、原料が手に入らないため生産に支障が出始めているのである。3つ目の苦しみである経済制裁は政治的な要素が強い。米国が欧州各国と協調してクリミア半島を力で奪取したロシアに対する「嫌がらせとお仕置き」を始めたともいえるが、この話題は複雑なので、コラムの後半部分などで解明していきたい。
まず、最初に通貨の暴落がどんな影響をもたらしているかを報告しよう。昨年9月に筆者がモスクワに来た時には、1ドルが35ルーブルだった。ところが現在(3月中旬)は約60ルーブルだから、ルーブルの価値が半年で約半分になったわけである。
今回モスクワに行って泊まった「定宿」(四つ星ホテル)が前回は一泊300ドルだったのが今回は120ドルになっていた。モスクワの高級レストランに入っても割安感があるので日本人が旅行に行って得した気分になるのは世界中で今のところロシアだけである。
つまり円為替は、ほぼすべての通貨に対して円安だが、ロシアルーブルに対してだけは円高・ルーブル安であるからだ。旅行、買い物、食事と何をしても半年前に比べて半値になっているのだから笑いが止まらないほど何でも安く手に入れるのだ。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら