実は、ルーブル安といえば、私自身は旧ソ連崩壊の時に、なんと3000%のハイパーインフレを経験したことがある。このときはレストランに入った時と店を出るときで価格が変動するほどで、一日のうちにメニューに書いてある価格が上がる。とても落ち着いて食事もできなかった、という思い出が残っている。
だが、公定の銀行レートといわゆる闇市では、米ドルの交換レートが何倍もの差があった。なので私にとってはルーブル払いの時は大儲けである。当時は会社で支給される出張費が為替益でまるまる残り、長期駐在をすると大いに貯金が貯まったものだ。旧ソ連の崩壊時期は駐在員にとっては危険もあったがメリットもあったのである。当時と比べると、今回の「ルーブル半値安」など、大したことはないともいえる、
ロシア人はインフレ対策に「レクサス」を買っていた!
今回の出張中、もっとも驚いたことの一つといえば、トヨタ自動車の高級車「レクサス」がバカ売れしている、と聞いたときだ。「こんな不景気な時になぜ高級車が売れるのか?」といえば、ロシア人のインフレ対策らしい。
ロシア人は昔の経験から、ロシア通貨を持っていても値下がりするから、まず、金や宝石に交換することを考える。ところが金や宝石はドル表示で交換するからメリットは少ないし売戻しの換金をする時に値切られると思っているようだ。
ところが高級車の「レクサス」なら、資産価値があるうえに値下がりはしないのだという。本来、ドイツのメルセデス・ベンツが高級車の中では最も資産価値があり金持ちはベンツが好きだが、ドイツは制裁側の国家だから、今は日本のレクサスの方が好感度が高いのかも知れない。トヨタの現地の代理店も、当然値上げを画策したが早い時期に予約(旧在庫にたいして)をされた分については、仕方なく旧価格で販売しているとのことだった。
さて、次は金利の暴騰である。ルーブル急落を受け、ロシア中銀は昨年12月16日に6.5%の緊急利上げを行った。2015年に入り1月30日の利下げ後も高金利(15.0%)水準が今のところ継続している。
一般企業への従来の貸出し金利は、一年前が10%前後だったのが現在は25%前後まで高騰しており、銀行は優遇レートで貸してはくれない。当然ながら、徐々に資金ショートに陥り、正常な生産などできなくなってくる。
それでも、国営企業や大手企業は信用度が高いので、高金利と言っても15%前後で貸し出しを受けられる。グルーバル化が進んでいる国際企業なら、安定性があるので心配はないようだ。だが、ロシアの経済不安がささやかれ始めるとさすがにデフォルト(債務不履行)の心配も出てくる。昨年12月13日の米議会の追加制裁法の可決による資本の流出加速と、今年1月26日のS&P格下げによるルーブル下落は危機感を煽った。その後は原油価格の低位での安定化もあり、為替は多少じり高傾向だ。
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