デンソー、知られざるその強さの秘密とは? あくまで「国内量産化」にこだわるワケ

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遠藤:ある企業の工場長と話したとき、製品開発と試作の機能だけを国内に残し、量産設備は安く作るために海外に移されたのですが、「『量産化』ができないと、モノづくりは国内に残せない」と、実に悔しそうに話されていました。加藤社長は、その点についてどうお考えですか?

加藤:私も同感です。「国内量産化」をしないと、モノづくりの力が弱くなると思います。円安であろうとなかろうと、まずは国内で量産化ラインを作ることは、当社としても譲れませんね。

遠藤:つまり、量産が日本でも成り立つように知恵を絞り、マザー工場として残す必要があるということですね。

加藤:ええ、そのうえで、海外で量産化ラインを作る際は、できるだけコンパクトにして持って行きたいのです。

生産ラインのコンパクト化も製品競争力

遠藤 功(えんどう・いさお) 早稲田大学ビジネススクール教授、ローランド・ベルガー会長。早稲田大学商学部卒業後、三菱電機、米国系戦略コンサルティング・ファームを経て現職。早稲田大学ビジネススクールでは、経営戦略論、オペレーション戦略論を担当し、現場力の実践的研究を行っている。 また、欧州系最大の戦略コンサルティング・ファームであるローランド・ベルガーの日本法人会長として、経営コンサルティングにも従事

遠藤:製品を売る地域でつくる「地産地消」ですね。生産ラインのコンパクト化はグローバル展開に欠かせない要素ですね。その代表例が、『現場論』でも紹介した「部品加工のダントツ競争力への取り組み」です。

加藤:生産ラインのコンパクト化も、製品競争力を支える根幹の部分です。

遠藤:それにしても、最低2分の1以上のコンパクト化を目指す「1/N」への挑戦は、業務改善のレベルを超えた高い目標設定ですね。

加藤:新製品の開発と、量産化ラインは日本国内で信頼性の高いものをつくり、それを地産地消で海外展開するという流れです。

遠藤:私が見学した、小型溶解炉と油圧ダイカストマシン(溶解させた原料を金型に押し込んで成型する機械)が併設された製造ラインには、本当に驚きました。従来は高さ4メートルの油圧ダイカストマシンが電動型になっていて、しかも高さ1.8メートルと、従来の半分以下という驚異的なコンパクト化でしたから。

加藤:小型溶解炉と電動型ダイカストマシン部分だけでも、従来設備のわずか20%のスペースに圧縮されています。しかもエネルギー消費量は50%、生産コストも33%の削減を、それぞれ実現しています。

遠藤:あのような生産技術力と現場力が融合して、デンソーのモノづくりを下支えしているのですね。

加藤:製品の量産化と高付加価値化という点で、「現場こそが価値創造の主役」という当社の考え方は、今後も何ら変わりありません。新設した「モノづくり棟」が、そこで果たす役割も大きいはずです。

遠藤:「現場力こそが、デンソーの競争力の源泉である」ということですね。対談の後半は、「3000人の“社内運動会”が5年後の売り上げをつくる」という観点から、お話を伺いたいと思います。

(構成:荒川 龍、撮影:今井康一)

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