いよいよ2014年も残り2日となった。新年を控えて、多くの人が仕事納めをしたことだろう。ただ、中にはこの時期の資金繰りに「ヒヤッとした」企業経営者や財務・経理担当者も少なからずいたかもしれない。年の瀬は何かと支払いがかさむ時期。一般家庭もそうだが企業もカネが回らなければ、極端な話、経営破綻してしまうからだ。
そんな企業の財務健全性を示す指標がネットキャッシュ。現預金と短期保有の有価証券の合計額から、有利子負債を差し引いた額だ。企業の実質的な手元資金であり、これが多いと財務的な安全性が高いとされ、不況に対する抵抗力が高いともいえる。東洋経済オンラインは上場企業の直近決算におけるネットキャッシュを割り出し、トップ200社をランキングにした。
1位はファナック。工作機械用NC(数値制御)装置で世界首位。産業用ロボットなどでも強い超優良企業として名高い。2014年3月期の売上高4509億円に対し、直近決算での現預金保有額は7609億円、短期保有有価証券も1200億円も抱えている。ネットキャッシュは8804億円で有利子負債はゼロだ。
苦戦する任天堂だが、財務は超健全
2位は任天堂。言わずと知れたゲーム機ハード、ソフトで総合首位の企業だ。任天堂は家庭用ゲーム機「WiiU」の不振で2014年3月期は売上高5717億円に対し、232億円もの最終赤字を強いられた。だが、直近決算で保有している現預金は4875億円、短期保有有価証券も3106億円にも上る。ネットキャッシュが7982億円、有利子負債はゼロ。前期決算ぐらいの赤字が数年続いたとしても、財務上はびくともしない。
3位にはキヤノン、4位には信越化学工業などが続いた。いずれも国際的な優良企業として知られる。
覚えている人も少なくないかもしれないが、2008年秋のリーマンショック時に頻発したのが「黒字倒産」。決算上の業績は黒字なのに資金繰りが急速に悪くなった企業が何社も倒産する事態があった。逆にいえば、本業がいくら赤字であってもキャッシュが回り続けていれば、企業が潰れることはない。手元資金を厚くしておくことは、企業経営者や財務・経理担当者にとって安心できることでもある。
一方で、ネットキャッシュがかなり潤沢にあるにもかかわらず、成長が止まっていたり、株価が低く時価総額が大きくなかったりする企業は、成長のための投資や株主への還元という意味で、手元資金を持て余しているという見方もある。 財務が健全だから、すべてが順調とも限らない。