「男として終わった」更年期障害に悩む50代の深刻 欧米諸国と比べて「ED」になるケースも多い

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しかしながら、更年期症状とは、年齢に伴う生理的な問題だけで発症するわけではありません。個人を取り巻く環境も大きく影響し、国の文化によっても症状の違いがあることがわかっています。

たとえば、1990年代後半にUCLAの医学部の研究グループが、欧米女性と日系女性を対象に実施した調査では、ほとんどの欧米女性が更年期にホットフラッシュと呼ばれるのぼせ、ほてりに悩まされるのに対して、同じ症状を経験する日系女性は1割にも満たないことがわかりました。日系女性は、肩こりや頭痛などが典型的な症状でした。

男性の場合は、女性ほど研究が蓄積されていません。しかし、日本の場合は欧米諸国に比べ、ED(勃起不全)になるケースが多く、ストレスの多さが背景にあると考えられています。長時間労働や休日出勤、責任だけ追わされる管理職など、日本の会社員のストレスは異常です。

それに輪をかけるのが、「年齢差別」です。「50歳」という年齢が、差別の壁になっていることはあらためて書くまでもありませんが、欧米では「年齢差別」が厳格に禁止されているのです。

会社員アイデンティティー喪失の危機にさらされる日本の中高年男性は、うつ傾向に陥るリスクも高い。それと並行して男性ホルモンであるテストステロンが低下する。抑うつ状態にあるとテストステロンが低下しやすく、テストステロンの低下が抑うつ感につながることもあるため、男性は社会的ストレスと生理機能の変化で、より厳しい状況に追い込まれてしまうのです。

男性の6人に1人が「更年期を知られたくない」

2021年7月、NHKが専門機関と共同で国内初の更年期症状に関する大規模調査を実施しました。そこでわかったのが、男性と女性とで「更年期ロス」に違いがあることでした。

更年期ロスは、更年期の症状により、仕事になんらかのマイナスの影響が出ることを意味しています。

海外ではワークモチベーションの低下、生産性の低下などの個人的なパフォーマンスの問題に加え、人間関係の悪化、職位の降格、離職意向の高まりなど、遂には「会社を辞めざるをえない」状況に追い込まれてしまうケースが報告されています。しかし、日本では更年期ロスはおろか、更年期症状に関する大規模調査も行われていませんでした。

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