「ほとんど仕事がない」50代部下なし管理職の苦悩 "大企業のぬるま湯"と"前進への葛藤"

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現場の一線から外れていく50代、苦闘する人たちを追います(写真:マハロ / PIXTA)

今の会社にとどまるか、転職や独立で別の世界に飛び込むか。40、50代で自分のキャリアの先行きに悩む人は少なくない。

大手メーカーの研究職、高橋賢一さん(50代後半、仮名)もその1人だ。企業の研究者として技術の製品化に取り組み、実績を上げてきた。しかし40代後半で研究の一線から外れ、今は部下を持たない「部下なし管理職」として工場での監査業務に就いている。

会社で仕事へのやりがいを見出せなくなった高橋さんが、半歩だけ外の世界に踏み出すまでを追った。

「皆さん頑張って部長になってください」

関西出身の高橋さんは、地元の中高一貫校を経て国立大の理系学部に進学。学生時代はバイオエタノールの研究に打ち込み、生物化学の分野で大学教員になることを目指していた。だが、家庭の経済的な理由で、大学院進学は諦めざるをえなかった。

1990年代初め、高橋さんは大手メーカーに研究職として入社する。就職氷河期に入る直前だったこと、理系だったこともあり、就職にはさほど苦労しなかった。中小企業勤めだった父は高橋さんに「上場企業に行けば幸せになれる」とよく言っていたという。

入社式で登壇した社長は、高橋さんら新入社員を前に、「皆さん頑張って部長になってください。頑張ればなれます」と呼び掛けた。

高橋さんは順調にキャリアを重ねた。大学で学んだバイオ分野の基礎研究を行い、開発した技術が製品化された。「自分で言うのもなんですが、企業の研究者としては素敵なストーリーを歩んでいたと思います」と高橋さんは言う。プライベートでは30代で結婚、子どもも生まれた。

だが、10年ほど前から市場環境の変化で、会社の注力事業と高橋さんが得意とする分野はズレが生じていく。

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