アメリカ自動車大手のフォード・モーターは2月13日、総額35億ドル(約4632億円)を投じて本国アメリカのミシガン州に車載用のリン酸鉄系リチウムイオン電池の工場を建設すると発表した。
新工場は(電池メーカーとの合弁ではなく)フォードの単独出資で建設され、容量ベースの年間生産能力は35GWh(ギガワット時)、生産開始は2026年を予定している。フォードはそこで生産した車載電池を年間約40万台のEV(電気自動車)に搭載する計画だ。
上述の発表と同時に、フォードは中国の車載電池最大手の寧德時代新能源科技(CATL)と新形式の提携に合意した。フォードの新工場に対して、CATLがリン酸鉄系電池の関連技術や(生産立ち上げの)サポート・サービスを提供するという内容だ。
「わが社はフォードのミシガン州の電池工場で(生産の)立ち上げと運営サポートに携わる」。CATLは2月14日、メディアの取材に対してそうコメントし、同社が持つ特許技術の使用も認めることを明らかにした。
(訳注:EV用の車載電池は、正極材の組成が異なる「三元系」と「リン酸鉄系」の2種類が主に使われている。リン酸鉄系はエネルギー密度は三元系に及ばないが、原材料コストが相対的に安く、エントリークラスのEVを中心に採用が広がっている)
米政府の「インフレ抑制法」に対応
新形式の提携の背景には、アメリカのジョー・バイデン大統領が2022年8月に署名して成立した「歳出・歳入法(インフレ抑制法)」の影響があると見られている。
同法には、EVを購入したアメリカの消費者が1台当たり最大7500ドル(約99万円)の税額控除を受けられる優遇措置が盛り込まれた。ただし、購入するEVの車載電池がアメリカ本土で製造されたものであることや、電池の原材料の一定比率以上をアメリカ本土またはアメリカが自由貿易協定を結ぶ国から調達することなどが条件になっている。
「アメリカ政府がEVシフトの推進と国内の雇用創出を望んでいるなら、中国の電池メーカーや電池材料メーカーが北アメリカに工場を建設したり、合弁会社を設立したりする(のを認める)ことが、米中双方の共通の利益になる」。スイス金融大手のUBSで自動車産業のリサーチを担当する巩旻氏は、2022年9月に発表した(インフレ抑制法の影響に関する)レポートのなかでそう指摘した。
フォードは新工場建設のメリットについて、「アメリカ本土にリン酸鉄系電池の生産拠点を設ければ、(中国からの)輸送コストを削減できると同時に、インフレ抑制法の恩恵も享受できる」と説明。アメリカで最も低コストの電池工場の1つになるとの期待を示した。
同社は2026年までに500億ドル(約6兆6165億円)超の巨費を投じ、EVシフトを一気に進める計画だ。車載電池についてはCATLのほか、韓国のSKオンやLGエナジー・ソリューションとも協力関係を構築している。
(財新記者:安麗敏)
※原文の配信は2月14日
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