「2023年の販売目標は400万台だ」。中国のEV(電気自動車)大手、比亜迪(BYD)の創業トップの王伝福氏が、機関投資家向けの会議でそう語ったとの噂が、最近、市場関係者の間を駆け巡った。仮に事実なら、同社は2022年の販売実績の2倍を超える大胆な目標を掲げたことになる。
この噂の真偽について財新記者が取材を申し込むと、BYDの担当者は直接的な回答を避け、次のようにはぐらかした。
「新型コロナウイルスの感染拡大の影響を受け、自動車市場では需要の動きや部品供給網などに多数の不確実性が存在する。2023年の販売目標ははっきり定めにくい」
中国のEVメーカーのなかで、BYDは2022年に突出した成長を見せた。同社が1月2日に公表した2022年の販売実績によれば、同年の「新エネルギー乗用車」の販売台数は前年(59万4000台)の3倍を超える185万7000台に急拡大。そのうちEVは同2.84倍の91万1000台、PHV(プラグインハイブリッド車)は同3.47倍の94万6000台に上った。
(訳注:「新エネルギー車」は中国独自の定義で、EV、PHV、FCV[燃料電池車]の3種類を指す。通常のHV[ハイブリッド車]は含まれない)
2023年も高成長を維持できるか
自動車販売の業界団体、中国乗用車市場情報聯席会の2022年1月から11月までのデータによれば、BYDはこの期間に157万6000台の新エネルギー乗用車を販売。メーカー別の販売台数ランキングで圧倒的トップに立ち、3割を超える市場シェアを獲得した。
これに対して、ライバルの販売実績は大きく水をあけられている。第2位の上汽通用五菱汽車(ウーリン)は同じ期間の販売台数が40万3000台、第3位のテスラは同39万8000台と、首位のBYDに100万台を超える大差をつけられてしまった。
それだけに、BYDが2023年も高い成長ペースを維持できるかどうかに市場の注目が集まっている。そもそも業界内では、2023年の新エネルギー車市場について先行きを楽観する声はほとんど聞かれない。
背景には、中国政府が新エネルギー車普及のために支給していた補助金が2022年末で打ち切られたことがある。消費者がEVを購入する際の実質負担が増加したうえ、補助金終了間際の駆け込み需要の反動も加わり、2023年前半の販売現場は厳しいプレッシャーにさらされそうだ。
(財新記者:余聡、蘆羽桐)
※原文の配信は1月5日
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