中ジョッキとあるが350ml程度しか入っていないのでは?と疑わしいこともしばしばだ。もっとあけすけに「このジョッキ、すいぶん小さいな……ジョッキというよりグラスでは?」と感じることすらある。しかし1杯は1杯、文句は言えない。これも亜流のステルス値上げといえるだろう。
器を工夫するのは、食費節約の王道テクニックだ。少ない量の料理なら大皿より小ぶりの器を使ったほうがたっぷり入っているように感じるものだ。家庭でも、サブおかずの量を多く見せたいなら、底部分が狭くなっているラッパ形の小鉢を使ったり、おちょこサイズの小鉢にちょこちょこ盛り付けて並べるとそれなりに見栄えがする。飲食店でも同じようなテクニックが使われている可能性は大いにある。
ステルス値上げは「貧者の値上げ」?
ステルス値上げの仕組みは100円ショップを例にするとわかりやすい。100円で売るという売価が先に決まっているため、その金額をなるべくはみ出さないようにコスト設計をする。消費者は100円で買えることを一番重視しているからだ。すると使う素材が変わったり、サイズが小さくなったりするのはやむをえない。
実際、以前「100均でついに130円の値札!店頭を調査してみた」でも書いたが、2022年3月までは500グラム入り100円で売られていた小麦粉が、8月には300グラム入りとずいぶんスリムになっていた。この先さらに小麦価格が上がれば、100均の店頭から消える日も遠くない。
こんな手法が増殖しているのは、われわれ消費者が使えるお金が限られているせいだ。賃上げが実現し、毎年所得が増えていけば何の問題もないが、使えるお金が増えない以上、それに合わせて買える量を減らすしかない。
小麦粉でも米でも砂糖でも、本来は値札に書いてある金額を払って買い物をする。しかし、貧しい社会では、「砂糖を1袋ください」ではなく、「このお金で買えるだけの砂糖をください」となる。つまり、ステルス値上げとは「貧者の値上げ」なのだ。
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