日本高血圧学会による高血圧の診断基準は次の通りである。
①医療機関で血圧を測定したときの値:上140mmHg、下90mmHg以上
②自宅で血圧を測定したときの値:上135mmHg、下85mmHg以上
30~50代は血圧の数値をどう読み解けばいいのか。苅尾医師はこう解説する。
「まず、上の血圧は収縮期血圧といって、心臓が血液を送り出したときの値になります。主に血管の硬さに関係していて、加齢と共に上がっていきます。一方、下の血圧は拡張期血圧といって、心臓が血液を溜めているときの値になります。こちらは心拍数などが関係していて、55歳ぐらいをピークに下がっていきます」
とくに下の血圧が高くなっている人は要注意。自律神経の1つである交感神経が亢進(こうしん)している傾向があり、仮面高血圧の大きな理由であるストレス性の高血圧に陥っている可能性があるそうだ。
血圧と交感神経の関係について後で述べるが、「とにかく50代半ばぐらいまでは、とくに下の血圧が高くないか気を付けていたほうがいい」(苅尾医師)という。
では、30~50代が気を付けなければいけない“やや高血圧”や、“仮面高血圧”はなぜ起こるのか。そして、なぜ注意しなければいけないのだろうか。
そのカギとなるのが、日内変動と自律神経の2つだ。
冬の寒い時期は血圧が高くなりやすい
心臓は安静時で1分間に60~70回、1日に10万回ぐらい拍動する。その都度、血圧は変わるわけだが、1日で見てみると、正常な状態であれば睡眠中の血圧がもっとも低く、明け方になると上がり始め、日中に高くなる。そして夕方から夜にかけて徐々に低くなっていく。
このように血圧はいつも一定ではなく、日内変動がある。
ちなみに、季節ごとでも血圧変動がある。寒い冬は血管が収縮するため、夏よりも全体的に10mmHgぐらい高くなりやすい。さらに冬はとくに、急激な温度変化(暖かい部屋から寒い部屋へ移動するなど)で血圧が上下し、循環器疾患が起こるヒートショックにも注意しなければならない。
そして、「実は、この日内変動で注意したいのが、ある時間帯だけ血圧が高くなる仮面高血圧なのです」と苅尾医師。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら