さらに、苅尾医師によると、メンタル的なストレスと、フィジカル的なストレスとは分けて考えたほうがいいそうだ。メンタルにきているからといって血圧が上がるとは限らず、逆にメンタルに問題がなくても体に大きな負荷がかかっていることもある。
そもそも、なぜストレスがあると血圧が上がるのかというと、そこには自律神経が関係している。自律神経とは体のさまざまな機能を調整する中枢神経のことで、アクティブモードになっているときに活性化する交感神経と、リラックスモードになっているときに活性化している副交感神経がある。
ストレスを受けると体は生体反応として、交感神経を活性化させる。交感神経が優位になるとカテコールアミンやアドレナリンなどが分泌されて、心拍数を増やしたり末梢血管を収縮させたりする。そのため全身を流れる血流の量が増える一方で、血液が通る道である血管が縮むため、血圧が上がる。逆に、交感神経を静めて、副交感神経を優位にさせることで血圧が下がる。
応急処置として「深呼吸」がお勧め
そこで苅尾医師が応急処置として勧めるのが、深呼吸だ。5秒かけてゆっくり鼻から息を吸い、10秒かけてゆっくりと口から吐き出す。この際、大きく肺を膨らませることを意識するのがポイントとなる。
深呼吸が血圧を下げることは、科学的にもわかっている。
「肺には伸展受容体があり、肺の膨らみを検出すると交感神経を抑制する反射が起こって、副交感神経が優位となり、血圧が下がるのです」(苅尾医師)
もう1つは、首回しだ。首の付け根にある動脈を優しくなでるのでもいい。首にある動脈には血圧のセンサーが埋め込まれていて、ここを優しく刺激すると上がりすぎた血圧が下がって、適正な血圧に戻るそうだ。
「もちろん、これらの対策は一時的なものでしかありません。血圧が上がるようなストレスがかかる業務や職場であれば、仕事内容を見直すとか、環境を変えるといった取り組みが大事です」(苅尾医師)
また、血圧は基本的には症状がわかりにくいサイレントキラーだが、仮面高血圧では体にいくつかのサインが出る場合があるので、そのサインを見落とさないことも大事だ。
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