「賃上げ」機運でベテラン社員が直面するあの問題 総人件費を抑えるには「トレードオフ」もありうる

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55歳になると給与が一律で下がる現在の制度も廃止します。さらに勤続20年以上を条件としている企業年金も見直し、個人の運用実績によって給付額が決まる確定拠出年金に一本化。退職金についても少しずつ前払いで受け取ることができる制度も導入する方向で進めているといいます。

他のメガバンクでも三菱UFJ銀行が職務内容に応じて報酬が決まる実力本位の人事制度に移行。三井住友銀行は能力に応じて柔軟に役職が昇格する仕組みを導入済みです。

メガバンク以外の業種・業界でも、年功序列の廃止の検討が始まっています。筆者の会社にも昨年来、「年功給を廃止したいがどうしたらいいか」といった相談が増加する傾向にあります。先日も創業100年を超える製造業のオーナー社長から「勤務年数で報酬があがる時代じゃないよね」との相談がありました。老舗企業でも見直しを避けて通れない環境になりつつあることを実感します。

「年功序列」はまだ生き残っていた

ここまで読んで、「年功序列がまだ生き残っていたのか」と、驚きを感じる人もいることでしょう。

1990年代以降、経済の低迷期がやってくるたびに年功序列が成長の阻害要因になっているとたびたび指摘されてきました。ところがさんざん話題にはなってきたものの、なくなりはしなかったのです。

日本生産性本部によると、日本での年功序列の導入割合は、2018年時点で47.1%と、まだ半数近くの企業が仕組みを維持していることがわかります。

最近フォー・ノーツが日本国内のオフィスワーカーに対して行った調査では、回答者のうち7割程度が勤務先では年功序列の人事制度になっているとの回答をしています。

「思いのほか、まだ年功序列」という実態は、多くの人からも聞こえてきます。新卒以来、外資系一筋で勤務してきた筆者の知人A氏が国内系メーカーに転職したところ、「45歳になればほぼ全員が部長の肩書がもらえる」職場だったそうです。

「部長」と呼ばれていながら、何をしているのかわからない人がいる。組織に無駄がありすぎるとA氏は驚き、嘆いていました。

聞けば、A氏が働くそのメーカーでも過去に何回か、リーマンショックや東日本大震災で業績が低迷した際、年功序列の廃止を検討してきた経緯はあったようです。

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