ところが、業績が少し回復すると、経営陣の判断で先送りにしてしまったのです。年功序列に代わる「新たな秩序」が自分の会社と合わないと感じたのが理由でした。
この会社における新たな秩序とは、業績や能力の高さで役割や報酬が決まる成果主義・能力主義のこと。外資系出身者などなら「むしろこれしかないでしょ」と言いたいところでしょうが、そうでない人たちには不安を抱く点がいくつもあるのです。
「やりたくない」理由ばかりが現場で噴出
例えば、成果を数字だけで計るようにしてしまうと、数字に表れない部分の評価がおざなりになり、不満が噴出しやすくならないか、という点。また、製造、事務、研究、管理といったそれぞれ違う職種において、どのような観点で評価基準を設ければ公正性が保たれるか、その選定も簡単ではありません。納得がいかない場合は社員のモチベーション低下につながる可能性があります。
また、個々人が成果を上げることに集中しすぎてしまい、若手の指導や育成がおろそかになってしまわないか。さらには成果を過度に求められる状況はストレスを感じやすく、離職率が上がってしまわないか。
「やりたくない」理由ばかりが浮かんできて、この期に及んでも先送りしようとする力がどうしても強くなってしまうのです。長年、日本企業で人事・組織を見てきた筆者からしても、変革するのは簡単ではないことを痛感します。
ただ、この国をあげての「賃上げ」ムードの中、何もしないわけにもいかなくなりそうです。そうすると、やはり年功序列の廃止は先送りできない状況になっていくはずです。
生産性の向上とそれについての合理的な説明を期待する株主からの圧力も年々強まるばかりです。
人的資本経営に関する情報開示が義務化され、人や組織に関する情報開示で株主からも厳しい指摘・提案がされる時代になりました。会社は生産性の向上、収益の最大化に向けて何をするか?自らが改革をすすめる必要に迫られているのです。
こうした環境の中、いくら抵抗勢力が多いとしても、さすがに10年以内に年功序列を厳然と維持する会社はなくなっていくはずと筆者は予想します。
もちろん、年功序列に代わる新たな秩序も必要になります。では、どのような秩序をつくるべきでしょうか。
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