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「良い大学、良い会社」だけが人生の"正解"ではない。「地元」に根差すという別の豊かさ/『東京で育つ/育てる』知念渉氏に聞く

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[著者プロフィル]知念 渉(ちねん・あゆむ)/大阪大学大学院人間科学研究科准教授。1985年生まれ。沖縄県出身。大阪大学大学院人間科学研究科博士後期課程修了。博士(人間科学)。著書に『〈ヤンチャな子ら〉のエスノグラフィー』、分担執筆に『世の中を知る、考える、変えていく』『ひとりもとりこぼさない学校へ』など (撮影:四竈佑介)
子育てには苦労がつきものだ。大都市には大都市の、地方には地方の困難がある。では東京の子育て世帯、とりわけ母親はどのように生活し、子どもと向き合っているのか。社会学者らの研究チームが丹念に調査し、生活史としてまとめた。編者に聞いた。

──どのような経緯で、東京都城東区(仮称)に暮らす母子にインタビュー調査を行ったのですか。

『東京で育つ/育てる 母子の生活史と不平等の布置』(知念 渉 著/有斐閣/3520円/364ページ)書影をクリックするとAmazonのサイトにジャンプします。

東京の自治体から調査依頼があった。「区内の高校生の現状を調査したい」と。自治体名は言えないが、仮に城東区とした。

日本の公立学校は中学校までほぼ市区町村立なので、その生徒・児童の状況は自治体も把握できている。だが、中学卒業後は情報が途絶える。城東区は、自治体として把握していない区内の高校生の現状について各家庭にアンケート(質問票)調査をしたいとの話だった。

調査に当たり、われわれが社会学者として引き受ける意味を考えた。貴重な機会を生かし、なるべく多くを社会に還元したい。

そこで、せっかくだからアンケート回答者に対面インタビューを申し込み、聞き取り調査もしようと。アンケートは約1000世帯に送り、保護者からの回答数は327。インタビューは24組の母子(1組は子のみ)に実施した。コロナ禍の2020年のことだ。

社会的条件の違いと生活様式に着目

──母子の生活について、父親の勤務する企業に依拠する「大企業型」、地域に帰属する「地元型」、どちらにも根差さない「残余型」の3類型で説明されています。

教育分野、子育て分野の格差研究では、従来「親の学歴」や「年収」を指標に論じられることが多かったが、本書では別のアプローチを採った。「文化資本」という概念を提唱したことで知られるフランスの社会学者ピエール・ブルデューの階級分析を手がかりに、とくに社会的条件の違い(社会空間)と生活様式(ライフスタイル)に着目している。

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