会員限定

黒田バズーカから利上げまで 金融政策効果の「定説」を問い直す/『金融政策の効果測定』郡司大志氏に聞く

✎ 1〜 ✎ 513 ✎ 514 ✎ 515 ✎ 516
著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小
『金融政策の効果測定 銀行理論と因果推論による再検証』の著者
[著者プロフィル]郡司大志(ぐんじ・ひろし)/大東文化大学教授。1974年生まれ。97年法政大学卒業、2007年同大学で博士(経済学)取得。日本学術振興会特別研究員(PD)、東京国際大学客員講師などを経て現職。09年財団法人納税協会連合会「税に関する論文」優秀賞受賞。著書に『マクロ経済学への招待』など (撮影:梅谷秀司)
一挙手一投足に注目が集まる金融政策。実は、その効果については定まった見解がない。本書は、「黒田バズーカ」や「マイナス金利政策」などの政策はほとんど効果がなかったことを、さまざまな手法で明らかにした。

因果推論による実証

──金融政策の実証研究はこれまでにも行われています。本書の独自性はどのような点にありますか。

『金融政策の効果測定 銀行理論と因果推論による再検証』(郡司大志 著/慶応義塾大学出版会/5720円/256ページ)書影をクリックするとAmazonのサイトにジャンプします。

因果推論による実証を選んだ点だ。マクロ経済分析の最大のツールであるVAR(ベクトル自己回帰)モデルには、結果が不安定という問題があり、批判もある。

VARは、パブリケーションバイアスという、出版するために良い結果だけを選んでいる可能性が高いという分析もある。これを使わずに分析をしたいと思っていた。

因果推論であれば、金融政策以外の事象による影響を最小限に抑えながら、金融政策の効果を推定することが容易になる。そのため分析ツールとして優れている。

──インフレ期待(将来の物価変動に対する予想)を高めることで実質金利を引き下げ、経済を刺激する「黒田バズーカ」は、家計の借り入れ意思を増加させていたという分析結果でした。

分析する前は、黒田バズーカはインフレ期待にすら影響しなかったのではと考えていた。ところが、借り入れ意思のある家計の割合が10%増加していたことがわかった。人々の心理面への効果は大きかったようだ。

ただし、同時期に銀行の貸出総額は増えていない。期待には効いたが、実際のマクロ経済への効果はなかったということになる。

大規模金融緩和はマネー(通貨量)に影響を与えられない。日本銀行が国債を買い入れても、銀行の貸し出しには何の影響もないからだ。それゆえ実体経済への影響はなかったというのが私の考えだ。

次ページETF買い入れ政策について…
関連記事
トピックボードAD