因果推論による実証
──金融政策の実証研究はこれまでにも行われています。本書の独自性はどのような点にありますか。
因果推論による実証を選んだ点だ。マクロ経済分析の最大のツールであるVAR(ベクトル自己回帰)モデルには、結果が不安定という問題があり、批判もある。
VARは、パブリケーションバイアスという、出版するために良い結果だけを選んでいる可能性が高いという分析もある。これを使わずに分析をしたいと思っていた。
因果推論であれば、金融政策以外の事象による影響を最小限に抑えながら、金融政策の効果を推定することが容易になる。そのため分析ツールとして優れている。
──インフレ期待(将来の物価変動に対する予想)を高めることで実質金利を引き下げ、経済を刺激する「黒田バズーカ」は、家計の借り入れ意思を増加させていたという分析結果でした。
分析する前は、黒田バズーカはインフレ期待にすら影響しなかったのではと考えていた。ところが、借り入れ意思のある家計の割合が10%増加していたことがわかった。人々の心理面への効果は大きかったようだ。
ただし、同時期に銀行の貸出総額は増えていない。期待には効いたが、実際のマクロ経済への効果はなかったということになる。
大規模金融緩和はマネー(通貨量)に影響を与えられない。日本銀行が国債を買い入れても、銀行の貸し出しには何の影響もないからだ。それゆえ実体経済への影響はなかったというのが私の考えだ。




















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