2020年に、従業員600人解雇問題で取り沙汰されたロイヤルリムジンの金子健作代表は、一斉値上げに対して否定的なスタンスを取る。同社は関東運輸局の公示により強制的に値上げが実施されることを違法だとし、運賃変更命令の差し止めなどを求め、東京地裁を提訴している。
根底にあるのは企業や顧客からの値上げに対する慎重な姿勢だ。
「グループの中でも予約の多い会社では、簡単に値上げをするという選択はできなかった。また、業界の中でなぜ14%も値上げが必要だったのか、という議論が十分になされていないと感じています。
本来であれば5~8%程度で、5年くらいのスパンで段階的に上げていくべきだと思いますが、一気に14%という数字の妥当性が見えなかった。お客様に対してのケアもありますが、そういった業界全体の姿勢を問いたい、ということもあります」(金子代表)
全国的に値上げを求める声
実に15年ぶりとなる今回の値上げの影響はすでに地方にも及んでいる。都内の値上げを発端に、全国的に値上げを求める声が起き、名古屋や新潟ではすでに新料金で稼働している。金子社長が続ける。
「東京のような流しの市場がない地方では、値上げを求める大合唱が起きている。その背景にあるのは、深刻なドライバー不足で、稼働台数が減ったことで総売り上げが著しく落ち込んでいること。地方では、数年後にはライドシェアなどを導入しないと人が移動できないという事態になっていく可能性もある。
これはタクシー業界の構造的な問題であり、運賃を上げて売り上げが伸びたから人が入ってくるという段階ではもはやありません。根底にあるお客様にとって乗りやすい乗り物であるべき、という原点に今一度立ち返ることの必要性も感じています」(金子代表)
タクシー業界がコロナ禍で疲弊したことは周知の事実だ。この値上げにより、一部のドライバーの生活は改善された面がある。一方で、ドライバーが足りない状況が続けば、料金の高さと利用したいときに捕まらないという利便性の悪さから、利用者のタクシー離れが起こる可能性もある。
改めて、タクシーの存在意義が問われる1年になりそうだ。
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