「うどん県。それだけじゃない香川県」
“うどん県”として知られる香川が、県を挙げて取り組む冒頭の観光プロジェクトが2011年に開始されて10年が経過した。9月中旬に香川県を訪れると、まず驚いたのは若者の観光客の多さだった。高松市内や坂出市内のうどん屋には平日にも関わらず行列ができており、「わ」ナンバーのレンタカーも目立つ。
そして、タクシーでうどん屋を訪れる女性グループも散見される。商店街には適度な賑わいがあり、それでいて混雑しすぎるわけでもない。随所で思わずカメラを向けたくなるような風情を感じさせた。香川は今、ほどよく国内客をひきつける観光地にも映った。
各観光地がいまだ苦境にあえぐ中、香川のタクシー事情を観光の視点から切り取っていく。
一度は落ち込んだ観光客が着実に戻ってきている
「香川はもともと特別な観光資源に恵まれた地域ではない」というのが地元住民たちからの認識なのかもしれない。実際に取材を通して、そんな声も多く聞こえてきた。それでもうどんやアート、離島といった要素をうまく打ち出して集客につなげてきた面が大きい。
瀬戸大橋が開通した1988年に観光客は1035万人を数えるが、2001年には730万人を切った。だが、以降年々、微増傾向が進み、2019年には968万人を数えている(数字はいずれも香川県調べ)。
高松駅周辺、フェリー乗り場などがある場所でタクシードライバーたちに話を聞くと、現在の水揚げ(売り上げ)は1日2万円~2万5000円程度だという。タクシードライバーに就いて20年を超えるという真中さん(仮名・60代)が明かす。
「コロナ前もコロナ後も売り上げ自体は大きく変わらないかな。今は稼働台数が半分くらいになっているから、その影響で拾える機会は同じくらい。昔は観光の方も関西と中国地方が圧倒的に多かったけど、今は関東も増えたね。香川は駅や空港、フェリー乗り場からの2次交通が弱い。離島から病院や買い物に来る方もいるし、高齢者も多い。日常利用はある程度見込める場所で、今年頭ごろから観光の方もだいぶ戻ってきた印象です」
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