一方で、観光ではなく介護や福祉に注力して生き残りを図る企業もある。高松市に本社を置く「ハロータクシー」は、介護や福祉の輸送車両の売り上げが全体の3割程度を占めている。同社のドライバーは、介護職員初任者研修(ヘルパー2級)の有資格者が8割を超える。地方都市の中でも核家族化が進む香川では、もともと介護需要が高かったという。代表の寺師大祐さん(45)がその市場をこう分析する。
「香川は介護タクシーの先進県だったんです。他県に先立ち、かなりの数のタクシー会社が介護タクシーに参入しました。介護保険が始まった2000年当時は、1つの輸送につき2000円程度の介護報酬が適応されていた。
ところが、それがどんどん引き下げられて、管理費がペイできなくなり、事業者が激減していったんです。それでも介護や福祉タクシーの需要は多く、約1000件契約させていただいています。決して大きな売り上げが立つ事業ではありませんが、需要は間違いなく増えていく。今後もこの部門には注力していきます」
タクシー会社は多いが稼働台数は半分程度
香川は四国で唯一、第一交通産業グループを含めた大手タクシー会社が参入していない地域でもある。その理由は事業者同士の横のつながりの強さが挙げられるだろう。
中小規模の事業者が多く、高松市には実に40のタクシー会社が点在する。市場に対してタクシー会社が多く、高松市だけで約800のタクシーがあるが、各社稼働台数の半数程度しか動いていないのも現実だ。こうした現状に危機感を覚える会社も出てきた。寺師さんもその1人だ。
「例えば岡山市の場合は、保有約1400台に対して20社ほど。公共交通として生き残っていくためには、配車などで部分的な協力は必要だと考えています。とくに配車については、人件費や配車時間の短縮などメリットのほうが大きい。経営統合までいかなくても、共有できる部分は共有していくことで、事業者にとっても、お客様にとってもすごくいい環境は作れるし、すでにそんな時代が訪れています。これは高松のタクシー会社にとって一番の課題だとみています」
もっとも県下のタクシーは観光であれ、介護・福祉部門であれ、それだけで採算が立つような状況ではないことも伝わってきた。同時に注力していく中で取捨選択をして、どこに重きを置くかということでもあるのだ。
観光需要の新たな喚起策「全国旅行支援」は、11月11日から香川での開始も予定されており、水際対策緩和と合わせて起爆剤としての期待も高い。決してうどん県だけではない観光地としての香川の底力は、タクシー業界にも活況をもたらす予感を漂わせている。
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