「香川」観光客多いのにタクシー業界が苦悩する訳 うどん以外の魅力も着実に浸透しているが…

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四国最初のタクシー会社である「日新タクシー」は、うどんとは異なる手法で観光客の呼び込みを図る。創業73年目を迎えた同社の社長、古竹美佐子さん(53)。古竹さんは東京や大阪で銀行マンなどのキャリアを経て、2年前に社長に就任した。

もともと四国八十八カ所を巡るお遍路さんの需要は高く、強みでもあった。そこでまず着手したのが、増えていたという「女子旅」へのアプローチだった。

「香川はアートの街として女性から高い人気を誇ります。それに伴い、近年ではオシャレなカフェや飲食店も増加していきました。そこで感度の高い女性をターゲットに、ホームページ刷新して、女性客をターゲットに企画を打ち出していったんです。男性がいるとレンタカーを借りるケースが多い中、女性だけだとタクシーでの移動も見込めると考えたからです。

実際に問い合わせも増えましたね。香川は女性だけで観光をするのに“ちょうどいい街”なんだと思います。食べ物、観光、アート、移動の幅といったバランス。そして、建築物1つとっても突き詰めると面白いという“冒険心”を擽り、それが刺さる女性が多いとみています」

高松駅前
高松駅前(筆者撮影)

欧米の観光客から人気が高い香川

今年は3年ぶりに「瀬戸内国際芸術祭」が開催されている。タクシー関係者の話を総括すると、前回の7~8割程度の来客規模だという。もともと多くの外国人が訪れる祭りだけに、外国人旅行者がごそっと抜けていることを考えると、かなり健闘している数字だろう。

香川の観光の特徴の1つにこの外国人客が挙げられる。「観光白書」によれば、2019年の香川の訪日客は2012年からの8年間で16倍を数え、全国一の伸び率だった。特筆すべきは、欧米圏からの高い人気だ。

バスや団体での行動も多い中華圏の旅行者は、実はタクシー利用はそこまで多くない。だが、欧米からの個人客は異なる。中でも彼らからとくに人気が高いのが直島をはじめとした離島だ。日新タクシーは直島に営業所を置き、駐在者もいる。古竹さんが続ける。

「香川は欧米の方からの人気がとくに高いエリアで、タクシーにもその恩恵は大きかったですね。その理由はやはり、瀬戸内国際芸術祭やアート目的の方の多さからでしょう。直島についてはタクシー視点でいうならアートの島として人気が“出すぎた”面もあります。今の移動のトレンドはキックボードや電動自転車がメインとなり、タクシーを利用する方は減少傾向にあります。同様にレンタカーも苦戦していると聞きます。

ただ瀬戸内国際芸術祭でも宿泊は岡山に、という方も多く、香川での宿泊者を伸ばすことは今後の課題でもある。ひきつける要素はそろっているだけに、見せ方の面でもったいないと感じる部分もありますね」

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