気の弱い人が自分の要求を上司に通す話の進め方 休暇申請ほか、デートの誘いなどにも応用可能

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相手が自然に受け入れてしまう要求の通し方がある(写真:EKAI/PIXTA)
上司に休暇を申し出て拒否される人と、無理なく承認される人がいます。この違いはどこから生まれてくるのでしょうか? 東京大学大学院で交渉学を学び、認知科学を専門に企業の人材育成業を営む犬塚壮志氏によれば、対人関係力は後天的に身につけられる「知能」の1つだということです。犬塚氏の新著『頭のいい人の対人関係 誰とでも対等な関係を築く交渉術』より、賢い人が身につけている交渉術の秘訣についてご紹介します。

人は知らず知らずのうちに選択をさせられている

突然ですが、1つ質問させてください。

「あなたがこれから目にする記事の1ページ目には『交渉の基本』が、2ページ目には『交渉の実例』が、3ページ目には『交渉の応用術』がまとめられています。あなたは、どのページから読み始めたいですか?」

もし、ここで「基本が知りたい」「応用も気になる」と考え始めていたら、要注意。これが交渉の場だとしたら、あなたの思考はすでに私の引いたレールに沿って動き出しています。

というのも、冒頭の質問が記事を読み進めることを前提として(仮定して)投げかけられています。そこには本来あるべき、もう1つの選択肢が排除されています。つまり、この質問を言葉どおりに受け取り、あなたが回答を考え始めた時点で、「この記事は読まない」「今すぐにここから離脱する」という選択肢がなくなっているのです。

試されたような感覚になり、気を悪くされたなら本当に申し訳ありません。ここでお伝えしたかったのは、頭のいい人たちが駆使する交渉テクニックの威力と違和感のなさ。それをあなたにまずは体感していただきたかったのです。

このように自分にとって不利な選択肢を隠して交渉を始めるテクニックは、「アサンプティブ・クローズ法」と呼ばれています。「アサンプティブ(assumptive)」 とは「仮定の」、「クローズ(close)」とは「合意に達する」の意味です。このテクニックを使うと、相手が自分のオファー(依頼)を受け入れるという前提(みなし)で話を進めることができ、有利な合意に達する確率が劇的に上昇します。

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