自分も同じだ、なかなか一歩が踏み出せないと思ったかもしれないが、この心理特性を認識することが自己成長の第一歩にほかならない。現状維持にしがみつく心理を手放し、行動を起こすための「明確な指針」が見えてくる。
次の図を見てほしい。前述の2つの図形を重ねたものだ。
「望ましくないことを無難にこなす」から、「恰好悪くてもいいから望ましいことをする」への移行は、不安から勇気に移ることにほかならない。
「不安」を押し殺してリスクを冒す勇気がなければ、右下の「恰好悪くてもいいから望ましいことをする」スペースにはいたれないのだ。
そこにたどり着いたら、今度は自分の弱さを認め、わからないものは「わからない」と正直に白状し、新しいスキルと知識の習得を心がける。その結果として、「望ましいことを見事に行う」右上のスペースに昇華できる。
右上の成長にいたるためには、今、自分がうまくできている仕事やルーティンワークから離れて「恰好悪くても望ましいことをする」必要がある。これが、自己成長するために誰もが通らねばならない通過点なのである。
下手でも「踏み出した人」を、人は讃える
実例を挙げよう。モーリス・チークスは1980年代を代表するプロバスケットボール・プレイヤーだ。引退後は指導者に転身し、数々のチームで手腕をふるった。
だが、チークスの名を聞いて人々が思い浮かべるのは、トレイルブレイザーズのヘッドコーチを務めていた2003年4月のダラス・マーベリックスとの一戦の前、セレモニーで示した粋な行動だ。
トレイルブレイザーズの本拠地ローズ・ガーデン・アリーナでは、試合前にアメリカ国歌斉唱のセレモニーが執り行われようとしていた。
国歌斉唱の大役を任されたのは、地元オレゴン出身の13歳ナタリー・ギルバート。
ギルバートは緊張のピークにあった。突然歌詞が出てこなくなってしまったのだ。歌えなくなり、涙ぐんでしまった。
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