冬の味覚「カニ」ロシア産急増でも価格高騰の理由 国産「松葉がに」の水揚げは微増にとどまる

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国産の松葉がには高嶺の花、ロシア産のズワイガニも高くて手が出しずらい。だが、あきらめることはない。見た目はイマイチだが味はいいと評判のカニがある。南アフリカの隣国・ナミビア沖が主産地の「マルズワイガニ」だ。

濃い目のベージュ色の体に濃い茶色の斑点があるのが特徴。見た目の悪さから贈答用には向いていないというレッテルを貼られているが、身が締まっていて、味は甘みと香りが強めでネット通販で販売されたり、回転ずしなどで使われているという。

マルズワイガニという呼称だが、実はズワイガニの仲間ではなく、オオエンコウガニ属に分類される。スペインやイタリアなどでは高級食材として流通しているという。日本ではほとんど獲れず、大手のマルハニチロと宮城県気仙沼市の水産会社がナミビア沖で漁を行っている。

缶詰ではロングセラー商品

ネット上には「見た目はともかく味はしっかりしていておいしかった」といった感想が載っていた。主力のタラバガニやズワイガニに加え、マルズワイガニも取り扱っているマルハニチロは、大洋漁業時代の50年前から缶詰製品を発売し、ロングセラー商品となっている。近くのスーパーでは110グラム缶が600円台から700円台で販売されていた。

カニをめぐる最近の状況を検証してみたが、やはり世界的規模で資源問題は深刻だ。アメリカ当局がベーリング海のズワイガニ漁を禁漁にしたり、ナミビア政府も漁業省が年間の漁獲枠を設定するなど対策を講じている。日本でも日本海をはじめ近海のカニ資源保護・維持のために「漁獲圧力」が実施されている。豊かな海を取り戻し、カニに手が届く日が来る日を待ちたいものである。

山田 稔 ジャーナリスト

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やまだ みのる / Minoru Yamada

1960年生まれ。長野県出身。立命館大学卒業。日刊ゲンダイ編集部長、広告局次長を経て独立。編集工房レーヴ代表。経済、社会、地方関連記事を執筆。雑誌『ベストカー』に「数字の向こう側」を連載中。『酒と温泉を楽しむ!「B級」山歩き』『分煙社会のススメ。』(日本図書館協会選定図書)『驚きの日本一が「ふるさと」にあった』などの著作がある。編集工房レーヴのブログも執筆。最新刊は『60歳からの山と温泉』(世界書院)。

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