「サバ缶」大ブームでも水産会社が喜べない事情 「代用品」としてイワシ缶が赤丸急浮上中

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さまざまな種類のサバ缶が発売されている(編集部撮影)

サバ缶のかつてないブームが水産会社の懐を潤している。2018年4~12月において業界トップシェアであるマルハニチロのサバ缶の売上高は前年同期比で5割近く伸びている。業界2番手の日本水産も約40%の増加という。                    

利益面でも貢献度は大きい。マルハニチロの場合、同期間における缶詰事業の営業利益は同約4割増えて20億円強となっている。サンマ缶やギフト用の高級缶詰が不調の中、大幅増益を達成している立役者がサバ缶だ。ちなみに同社の今通期の連結営業利益計画は250億円(前期比2%増)。缶詰事業は立派な利益柱の1つといえる。

シェアは倍増、広がるサバ缶市場

サバ缶の市場拡大は目覚ましい。市場調査会社のインテージの調べによると、2018年のサバ缶の全国市場規模は263億円で、ツナ缶を抜いて魚介缶詰の中で最大となった。2017年に前年比35%と大きく増え、2018年には同53%と伸びがさらに加速した。魚介缶詰市場全体(2018年は818億円で同13%増)に占めるサバ缶のシェアも、2014年の16.5%から2018年には32.2%へほぼ倍増した。

ブームの要因としては、テレビの人気情報番組でサバ缶の栄養価の高さや健康・美容への効果が相次ぎ紹介されたことが大きいようだ。サバ缶は、生活習慣病の予防や脳の活性化、ダイエットに効果があるとされる必須脂肪酸のEPA(エイコサペンタエン酸)とDHA(ドコサヘキサエン酸)が豊富に含まれる。骨や血合も丸ごと食べられるので、生で食べるよりカルシウムやビタミンDを多く摂取できる。

また、水煮にしろ、味付けにしろ、そのまま手軽に食べられるうえ、パスタ料理や味噌汁、カレー、煮物の具材として使うなど多彩なレシピがネットで紹介されている。値段も一缶200円前後からとお手頃で、長期保存もできるため、老若男女に受けている。

料理レシピの検索・投稿サイト「クックパッド」は、2018年の「食トレンド大賞」にサバ缶を選定。食に関する調査・研究を行う「ぐるなび総研」も、食の世相を象徴する2018年「今年の一皿」にサバを選んだ。まさに食卓における天下を獲ったような勢いである。

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