「サバ缶」大ブームでも水産会社が喜べない事情 「代用品」としてイワシ缶が赤丸急浮上中

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農林水産省の統計によると、主原料であるマイワシの国内漁獲量は近年増加傾向にあり、2017年は約50万トンで前年比32%増。5年前に比べると3.7倍に増えている。水産庁の水産物流通調査では、2018年の水揚げ量は前年比でやや減っているが、高水準は保っている。

漁獲量が増加傾向にある理由は明確でないが、業界関係者の間では「マイワシには海洋環境の変化(レジームシフト)によって40~50年ごとに資源量が急拡大するサイクルがあるといわれ、前回の1980年代に次ぐ拡大期に入ったのではないか」(水産大手)と期待する声がある。

ちなみに前回のマイワシの国内漁獲量ピークは1988年で448万トンに達していた。今後もしマイワシの資源量が本格的な拡大期に入れば、生鮮イワシやイワシ缶もより安価に出回ることになるだろう。水産各社が強化している高級魚の養殖業で餌代のコスト低減にもつながる可能性がある。

魚離れや内需縮小の逆風

しかし、国内需要が資源量に比例して伸びるということにはならない。確かにサバ缶やイワシ缶の人気はうなぎ登りだが、魚介類の1人あたり国内消費量は今世紀に入って長期的に減少傾向が続いている。肉食への嗜好の変化、調理のしづらさ、価格の高さなどの原因が指摘されるが、今後は少子高齢化と人口減少によって内需全体が縮小していく懸念が強い。こうした魚離れや内需縮小といった猛烈な逆風を、一部の缶詰の好調でかわすのはとうてい不可能だ。

水産大手は近年、缶詰やフィッシュソーセージといった常温食品以上に、ライフスタイルの変化で需要が増す総菜や米飯などの冷凍食品を強化しており、売上高全体が停滞する中で付加価値の向上を図っている。マルハニチロが「グローバルな総合食品会社」を標榜しているように、今後の成長のためには加工食品を中心とした新分野の開拓、輸出を含めた海外事業強化が重要な課題となる。「缶詰ブームに浮かれている余裕はない」。それは経営者がいちばん感じていることだろう。

中村 稔 東洋経済 編集委員
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