欧米では、「アドバイスはマネージャーの仕事だ」と考えられていますが、日本人は、マネージャーに限らず支援行為の国民性がありますから、「困っている人がいるなら、アドバイスするのは当然のことだ」と考えます。
そうした価値観を失わないためにも、ある一定の頻度でオフィスに出てきて、顔を合わせる必要があると考えられます。
テレワークがデメリットになりうるケース
池田:私は2015年からテレワークの研究をしていますが、組織に入って間もない人や、スキルが追いつかない人、転職したばかりの人は、テレワークを控えたほうがよいのではないかという視点もあります。
リンダ・グラットンも言うように、オフィスの最大の役割は、「ほかの人たちとつながること」です。やはり、周りに人がいて、すぐ支援行為を受けられる環境でないと、会社のカルチャーもわかりません。困っていても、チャットやテレビ会議の画面からだけでは、その度合いが伝わらないところもあります。
ですから、その人に応じて、例えば「週4日出社して、先輩から仕事を習いましょう」というようなルールがあってもいいかもしれません。
また、コロナ禍の長期化が私たちに与える影響を調査した弊社のデータからは、コロナによって、40代後半~50代の中高年が心身ともにダメージを受けていることもわかっています。
誰にも弱音が言えない世代で、以前は飲みに行ったり、ゴルフに行ったりしてストレスを解消していましたが、コロナでそれもできなくなり、自分の中にため込んでしまうのです。
――通勤がなくなって、運動不足になっているという問題もありますね。
池田:それはテレワークが原因というよりは、コロナの拡大が原因です。本来のテレワークは、運動不足にはなりませんし、体に悪いものでもありません。
テレワークとは、自宅、会社、それからコワーキングスペースやサテライトオフィス、図書館などを移動しながら働くということで、自宅というのは、あくまでも選択肢の1つでしかありません。
ところが今は、コロナが原因で、在宅を強制されるようなテレワークになっています。弊社が定点観測的に行っている調査では「自宅は働きにくい」と感じている人が3割程度います。