――管理から投資へ、デザイン面ではどのように変化していますか。
池田:昔のオフィスは、コスト重視でしたから、1つの箱の中にできる限り大人数を詰め込みたいと考え、同じ机をザーッと並べていました。
しかし、今のオフィスは全員が出社しなくなったこともあり、オフィス空間に余裕が生まれてきています。そして、家具もデスクとイスが並ぶだけではなく、ソファが導入されたり、通路なのか、何かを置くのか、用途がわかりづらいエリアがオフィス内にたくさん生まれています。
弊社では、さまざまな企業の全国のオフィスで床面積あたりの家具占有率のデータを20年以上取り続けています。
家具占有率は、40%を超えると息苦しくなるのですが、近年はそれを下回っていますから、そこにいる人は居心地よく感じられていると思います。
経営者からすれば、「なんだかわからない空間があるから削れ」と思うかもしれませんが、働いている人にとっては快適というデータがあるのです。
日本人ならではのオフィスの価値観
川口:ただし、日本人は、ゆとりの空間を使うことが苦手ではありますね。通路の真ん中に置いてあるソファスペースに座る人は、あまりいません。注目されているように感じたり、サボっているように見られる気がして困るのでしょう。
欧州では、教会前のプラザにある段差などに腰を掛けておしゃべりする日常風景がありますが、日本ではそのようなことは少ない傾向にあります。
しかし、これからは、「あんなふうに座っていいんだ」「私は私で、違った使い方をしていいんだ」と思えるようなキーワードがでてきて、変わっていくのではないかと期待はしています。
池田:日本的なオフィスにも価値はあると思います。心理学用語で「支援行為」と言いますが、日本人は他の人を助けようという感覚で、仕事を成り立たせる傾向があります。リンダ・グラットンは著書の中で、集合型オフィスには「協力」を引き出すという優位性があると述べていますが、日本人の価値観ともマッチしていますね。