ハンバーグ「第4世代」が人気を集める納得の理由 店増える「進化系ハンバーグ」とは何なのか

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「俺のハンバーグ」ができた後、2007年に東京・五反田の「ミート矢澤」が開業するなど、ハンバーグを打ち出す店が続々誕生。「ブームは東京都内が中心でしたが、大人がデートなどで『ハンバーグを食べに行こう』と言える空気ができた」と指摘する田形氏。その流れの中で、セブン‐イレブンが2010年に「セブンプレミアム ゴールド」シリーズのハンバーグも発売した。

庶民に親しまれる料理になってから半世紀しか経っていないが、「ハンバーグには伸びしろしかない」と田形理事長は熱く語る。

「ルーツも解明されていませんし、カレーやラーメンのように聖地があるわけではない。今までは語れる要素が少なかった。しかし、肉の配合やスパイス、焼き方などさまざまに工夫ができて奥が深い。ジビエや代替肉を使うなどの広がりもある。家庭用の冷凍ハンバーグも高級化路線により、伸び始めている。これから価値が高くなっていく料理だと思います」

ハンバーグが「和食化」する背景

田形理事長は静岡県藤枝市を拠点に活動しているが、2016年から理事長を引き受けた日本ハンバーグ協会はもともと、「2013年、ハンバーグを心から愛するマニアが集まり、『大真面目にハンバーグを語り継ごう』と結成されました。当時、私は静岡県西部でハンバーグによる町おこしに取り組んでおり、その活動が協会設立の原点になります」と説明する。

静岡県には、今の進化系ハンバーグの店が採用している、客の目の前でハンバーグの焼きを仕上げるパフォーマンスが売りのファミレスチェーン「炭焼きレストランさわやか」がある。ハンバーグは牛肉100%が売りでである。開業は1977年。そうしたハンバーグのパフォーマンスを行う店の元祖は横浜の「ハングリータイガー」で、1969年創業。実は今各地で流行するスタイルは、半世紀前から存在していたのである。

西洋料理として明治期に入ってきたハンバーグは、半世紀前に洋食として大衆化するとともにブームが起きた。それが今、丼形式などでご飯に合わせる形で和食化し、改めて流行している。近年は、世界各地からやってきた料理やスイーツが次々と流行するが、和食の存在感は薄れていた。

しかし、コロナ禍の影響か、家庭料理が見直されるなど食の流行は原点回帰の様相もある。ハンバーグの和食化は、もしかするとそうした原点回帰の1つではないか。今の流行を経て、ハンバーグはすっかり和食として認知され、そして世界に誇る日本食に発展していくのかもしれない。

阿古 真理 作家・生活史研究家

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あこ まり / Mari Aco

1968年兵庫県生まれ。神戸女学院大学文学部卒業。女性の生き方や家族、食、暮らしをテーマに、ルポを執筆。著書に『『平成・令和 食ブーム総ざらい』(集英社インターナショナル)』『日本外食全史』(亜紀書房)『料理に対する「ねばならない」を捨てたら、うつの自分を受け入れられた』(幻冬舎)など。

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