「鎌倉殿の13人」政子と義村"ラスボス"はどちらか 小池栄子の「目ヂカラ」vs山本耕史の「肉体美」
確かに政子の行動によって頼朝が鎌倉殿になり、悲劇がはじまったのだが、悪気はいっさいないのである。頼朝の浮気相手への激しい嫉妬から行った「後妻打ち」に関しても酷い行いではあったが、りくから京都の風習と教わってやったもので、政子が主体的かというとそうではない。そう、政子はあまり主体的な人物ではない。そしてこれこそが『鎌倉殿〜』の政子の魅力である。
田舎出身で学もないが、何かひとつ責務を負うと、なんとしてでもやりぬこうとする愚直なまでの真面目さを持った人物、それが政子である。情愛の人と言っていい。庶民的な親しみの持てる政子を小池栄子が気取らず純朴に、溌剌と演じた。
「グラビア」も武器になると思っていた
小劇場の街・下北沢で育った小池は、ダンスが好きだった10代の頃、グラビアモデルとしてデビューした。グラビアのほか、バラエティー番組、テレビドラマ、映画、舞台など幅広く活動し、映画『接吻』(2008年)や『八日目の蝉』(2011年)などで映画賞を受賞し、俳優として注目されるようになった。
シリアスな役もハマるが、バラエティーで培った間合いの才を生かし、喜劇でも重宝されている。喜劇作家・三谷幸喜作品にもこの間合いの良さがハマって見える。でもそれを決して、こともなげにやっているふうではなく、懸命に集中してやっているように見えることが彼女の特性であろう。
引き受けた仕事にとにかく全力で打ち込む、その熱量が心を打つ。以前、小池栄子に取材したとき、自身の胸が大きいことを武器にしていたという話をあっけらかんとしてくれた。この部分だけ切り取ってネットなどで拡散しないでほしいのだが、こんなことを言っていたのだ。
「グラビアをやっている時、胸が大きいことは面白い武器になると思っていました。いまだに、巨乳というちょっといびつな存在をどうにか有効活用しないと日常では持て余してしまうから、この肉体を生かしてくれる場と役を常に求めているんですよ」(ワニブックス『プラスアクト』No.122より)
『鎌倉殿~』では着物で肉体を覆い隠していたが、その分、真剣になったときの目ヂカラが際立っていた。頭巾に覆われた顔からぎょろりと光るまなざしが、政子のこわいくらいの純粋さを象徴するようだ。小池栄子のひとつのことに集中するときの瞳の真剣さは、堤幸彦監督映画『恋愛寫眞』や『2LDK』『20世紀少年』などでとくに生かされている。
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