箱根で大失速「選手に2日後」同じ道を走らせた訳 竹石選手が原監督から学んだ挫折の向き合い方

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箱根駅伝でのある学生の挫折経験と、原監督が伝えた言葉と姿勢(写真:RewSite/PIXTA)
原晋監督就任から5年後の2009年に33年ぶりに箱根駅伝出場、そして2015年には初の総合優勝。そこから2018年にかけて4連覇を果たし、2022年には大会新記録を更新して優勝するなど、今や押しも押されもせぬトップ校の仲間入りを果たした青山学院大学陸上競技部。
ですが、原監督はある不安を抱えているといいます。それは、「部としての体制が整ってきたがゆえに、多くの学生が「挫折」を知らないまま社会に出てしまっているのではないか」ということです。新著『「挫折」というチカラ 人は折れたら折れただけ強くなる』を一部抜粋し再構成のうえ、ある学生の挫折経験と、どん底の彼を原監督がどのように立ち直らせたのかお届けします。
前回:『日本の社会全体に蔓延る「挫折不足」の大問題

一点の言い訳もない「負け」を自覚する

竹石尚人の姿は、多くの箱根駅伝ファンの記憶に残っていると思います。名前は知らずとも、3年生の箱根山登りの5区でブレーキ。リベンジをかけて「5年生」として出場した箱根で再びブレーキとなった選手といえば、思い出すかもしれません。

竹石は山登りに適性があり、2年生のときに箱根の5区で初出場、区間5位の成績を残しました。3年生のときも練習から調子がよく、自信を持って送り出しました。しかし、結果は区間13位、後続に抜かれ往路6位の結果となりました。結局、復路優勝はしたものの、その年は総合2位。竹石はメディアなどで5連覇を逃したことの「戦犯」扱いをされ、大きな挫折体験となっただろうと思います。

顔を上げることができないほど落ち込む大きな失敗をしたときに、どうすればいいか。それは負けを負けと認め、次の目標に向けて早くスタートを切ることです。なぐさめを求めたり、現実から目を背け、苦しみから逃げてはいけません。

私は、レースの2日後、落ち込んでいるであろう竹石を連れ出し、同じ箱根のコースを走らせました。本人はそんなことできる気分じゃないことはわかっています。それでも、「負けを負けだと認めさせることが大切だ」と思ったのです。

本番とほぼ同じ時期に、再び同じコースを走れば、自分の実力がどの程度だったのかを確かめることができます。

次ページ2日後に同じコースを走らせた理由
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