箱根で大失速「選手に2日後」同じ道を走らせた訳 竹石選手が原監督から学んだ挫折の向き合い方

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人は失敗したときに、その苦しみから逃れるために、たまたま運が悪かった、体調が悪かったなどと思いたがる。だめならだめでいいのです。中途半端にうやむやにして、 その苦しみから逃げることがいちばんよくない。

力が不足しているのであれば、その力を補えるように、再びスタートを切るだけです。それをただ「残念だったね。ドンマイドンマイ」というのは、優しさでも何でもありません。上っ面でなぐさめるのではなく、アスリートとして次の挑戦に導いていくことが本当の優しさです。

ですから日を置かず、まだ生々しい悔しさが鮮烈に残っているうちに、走らせようと思いました。2日前に走った同じコースを走り終えた竹石には、「今が競技人生においていちばん下、ゼロ地点にいるんだ。だとすれば、ここからは上りしかない。1年かけて上がっていこう」と伝えました。

長距離競技は人生と同じです。今日明日少し頑張ったからといって、結果が出るわけではありません。自分の実力が足りないことがわかったら、そもそもの思考を変えて、日々の練習方法から変えていかなければならない。そのためには一刻も早くリスタートすることが必要なんです。

その後も1月下旬の都道府県対抗駅伝に始まり、日本平桜マラソン、上海ハーフマラソンなど竹石には次々と走らせました。結局、競技での失敗は競技でしか取り返せません。試合に負けて、試合に出ること自体を恐れてしまったら、ランナーとしての次はないのです。

人に与えられた時間は平等であり、限られています。大学生であれば、基本的には4年間しかない。だとすれば、少しでも早く正しい努力を始めた者が次の勝利者となるのです。

だから、私は「またお前だめだったのか」などと責めることはありません。それすらも時間がもったいないからです。勝つためにどう効率的に時間を使うかを考えたときに、自分の弱さを認めて、すぐに切り替えて前を向くことが大事です。

全力を尽くした者の挫折は次へ向かうバネになる

竹石は4年生のときはけがで箱根に出場ができませんでした。彼は登録メンバーを発表する月の直前にやってきて「けがでメンバーから外してほしい」、そして「もう1年やらせてほしい」と言いました。

原晋監督(©マガジンハウス)

私は、もう1回箱根に出て、卒業しても陸上競技を続けていきたいという彼の挑戦を認めました。彼は1万メートルの自己ベストを更新し、私も自信を持って5区の山登りに送り出しました。

しかし、悪夢は再び訪れます。結果はまたもブレーキ。途中で何度も立ち止まり、 けいれんを治そうとストレッチする姿が全国へ流れました。区間17位、チームとしては往路12位となり、優勝は絶望的となりました。私自身も予想外の結果で、「箱根駅伝はわからないな」というのが正直な感想です。

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