地球規模の生態系の混乱がやがて収束して、わたしたちが新しい均衡状態に達することができても、人類が地球上に存続する限り、豊かな地球は永久に戻らないかもしれない。
主流の環境科学によって予想されている未曾有の大惨事の直接の原因は、ほかでもない地球に対する現在のわたしたちの振る舞いにある。
第二次世界大戦後の1950年代から、人類は「大加速(グレート・アクセラレーション)」と呼ばれる時代に突入した。
影響や変化の値を時系列のグラフにすると、多くの領域で、驚くほど似たようなパターンが示される。人間活動の傾向は国内総生産(GDP)のほか、エネルギー消費や水消費、ダムの建設、電気通信の普及、農地面積の推移などで表すことができる。
環境にどういう変化が起こっているかは、さまざまな方法で分析できる。大気中の二酸化炭素や亜酸化窒素やメタンの濃度の計測からも、地表付近の気温や、海洋酸性化や、魚の個体数や、熱帯雨林の消失面積の計測からも分析は可能だ。
しかし何を計測しても、グラフに描かれる線の形は似通ったものになるだろう。20世紀半ばから加速度的に上昇して、険しい山の斜面ないしはホッケーのスティックのような形になるだろう。
作るグラフ作るグラフがすべて同じになる。そのように何もかもが急成長しているのが、現代社会の特徴にほかならない。それはわたしがこの目で見てきた時代の普遍的な型になっており、わたしが報告しているどの変化の背後にも大きく横たわっている。
一人称で「大加速」の歴史を語っているのが、わたしの証言なのだ。
微生物学者が教える成長の終わり
それらのグラフをひととおり見て、そこに判で押したように右肩上がりの線が描かれているのを目の当たりにすれば、当然、次のような疑問が浮かぶだろう。こんなことがいつまでも続くのだろうか、と。もちろん続くわけがない。
微生物学者もこれと同じ形で始まる成長のグラフを持っており、それがどのように終わるかを知っている。
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