「生活に支障出るほど感情移入」ふかわさんの苦悩 年を重ねるほど周囲の顔色に敏感になっていく

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――いじめは決して許されるものではないけれど、その行動の奥にある苦しみやそうせざるを得ない背景にも目を向けるべきだと。

場合によりますが、単に「悪」だからと切り捨てる行為は、僕にはできないというか。

以前、テレビ番組でゴミ屋敷を片づけるという企画がありました。周辺の住民からすれば、臭いや火災の原因になるので物理的に迷惑をかけているのは事実ですが、どうもゴミ屋敷の住人の方のお話を聞いていると完全な悪人に思えないんですね。

ゴミを溜めてしまうのは、それだけ心に何かを抱えているからなんだろうなって、背景のほうに目を向けてしまいます。

これは「判官びいき」とかではなくて、どちらにも平等に向き合いたい気持ちが自分にはあるんだと思います。

――人や物事に対して深く、細かく考えてしまうふかわさんは、人間関係でやりにくいと思うことはないですか。

ありますよ。これ以上踏み込むと相手は傷つくだろうなとか、自分自身も傷つくのを恐れることもあります。ほんの少し、相手の顔色が変わっただけでも敏感に気づいてしまいます。

相手の顔色を見ながら物事を進めていく敏感さは、番組のMCをするうえでは有効なのですが、日常においても繊細に反応してしまうので、オンオフのスイッチがあればいいなって思います。20代のときよりも、センサーの感度が良くなっている気がします。

年を重ねるほど周囲の顔色に敏感になっていく

――年を重ねると、神経が図太くなりそうですが、ふかわさんはより鋭くなっていると。

僕の場合は感度が高くなっていますね。子どもの頃って、正直な分、残酷な面もあるじゃないですか。

でも、大人になると視野も広がって周りのこともよく見えるようになるので、相手も自分も傷つけないように感覚を研ぎ澄ませないといけない。僕はそれが顕著なのかもしれません。

ふかわりょう/1974年生まれ。神奈川県出身。94年、慶應義塾大学在学中にお笑い芸人としてデビュー。長髪に白いヘア・ターバン姿の「小心者克服講座」でブレイク。後の「あるあるネタ」の礎となる。現在はテレビMCやコメンテーターをはじめ、ROCKETMANとして全国各地のクラブでDJ活動を行う。楽曲提供やアルバムを多数リリースするほか、エッセイを発表するなど、活躍の幅は多岐にわたる。著書に『世の中と足並みがそろわない』『ひとりで生きると決めたんだ』(いずれも新潮社)などがある。(撮影:今井康一)

――周囲の様子を敏感に察知するふかわさんにとって、MCのお仕事はとても合っているのかもしれませんね。

すごく合っているとは思わないですが、性に合っているとは思います。今MCをさせてもらっている生放送の『バラいろダンディ』(TOKYO MX)では、毎回個性が際立ったゲストの方が出演されます。

僕としては出演者も番組の中身もすべて“楽器”だと思っているので、そのアンサンブルのハーモニーを届けたいという心持ちでいます。

特に生放送なので、テンポやリズム、緩急など音楽的な要素を重視していると言いますか。僕自身、音楽に携わっていることもあって、そうした要素を反映できるこの番組は、相性がいいなと感じます。

人生も音楽的なアプローチで考えてしまいますね。人生は、幸不幸で分けられるものでもなく、長調もあれば、短調の響きもあるし、速いテンポのときやゆるやかなときもあるとか。

「今、自分は人生の第何楽章を奏でているんだろうか」と、思考をめぐらせることもあります。

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