「パパのほうが稼いでる」と子どもが思い込むなぜ 幼い子が無意識に「性差別発言」をしてしまう訳

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性差別は社会のあちこちに影を落としています。女性の適任者が大勢いるのに、企業のトップも政治家も男性ばかりなのはなぜでしょうか。働く時間が男女で同程度でも、女性が育児や家事をになう割合が圧倒的に高いのはなぜでしょうか(この問題はコロナ禍でさらに浮き彫りになりました)。

平等な社会に向けて少しずつ前進してはいるものの、道のりはまだ長そうです。平等な社会を実現するには、文化を根本から改革し、子どもを見る目や子どもへの話しかけ方、関わり方を変えなければなりません。

なぜなら、性差別は幼い頃に根づくからです。子どもは男女を見分けられるようになると(一般的に1歳前くらい)、ジェンダーについて推測し始めます。親が無意識のうちに子どもに間違ったメッセージを送っている場合もたくさんあります。私自身も、親として100%平等だと言いたいところですが、考えてみると娘に関しては息子より外見の話をしがちです。

ということは、「息子よりも娘の外見は大事」「娘の価値は外見に左右される比率が高い」というメッセージを送っているわけです……よくないことです。複数の研究の指摘によると、考え方はジェンダー平等主義的なのに、実際には性差別的な固定観念を助長している親は多いそうです。

先日読んだある論文では、こう結論づけられていました。「大多数の母親は平等主義的な考えを持っているほうに属するが、子どもにそれを伝える努力をほとんどしていない」。

おもちゃ、習い事にも注意が必要

全ての責任が私たちにあるわけではありません。私たちは長い間ジェンダーの固定観念を見聞きして育ってきた、性差別社会の産物なのです。頭では時代遅れの考え方を否定しようと思いつつ、体に染みついた癖が直りきらないところがあります。

けれども子どもたちのために、少しずつでも改めることはできるはずです。私も、子どもたちとの関わり方を意識し始めて以来、言うべきでない言葉を口にする前に、はっと気づくようになりました。幼い頃に性差別意識が芽生えるのは、ある意味ありがたいことです。

なぜなら、10代になると親の目が届かない部分が増えるのに対し、幼い子どもであれば、周囲から性差別的なメッセージを受け取るのを親が阻止できるからです。

子どもが固定観念を抱かないように、会話やおもちゃ、習い事、服、習慣におけるジェンダーの取り上げ方に気をつけましょう。世の中における性差別の存在とその仕組みを子どもに認識させ、差別と闘う力をはぐくみましょう。

具体的なアプローチの説明に入る前に、少し補足させてください。ここで紹介する研究・論述・助言の中には、ジェンダーを2種類としているものがありますが、実際のジェンダーは二者択一ではありません。本章では便宜上「男子」「女子」と表現しますが、私自身はこの区分に当てはまらない子の存在を理解し、尊重していることをおことわりしておきます。

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