「パパのほうが稼いでる」と子どもが思い込むなぜ 幼い子が無意識に「性差別発言」をしてしまう訳
私の娘が6歳になったばかりの頃、心の奥底にある性差別意識が垣間見えた出来事があります。「私はいつか男の子になれるの?」と聞いてきたのです。真意をはかりかねた私が「男の子になりたいの? どうして?」と聞くと、娘は「大統領になるために、いつか男の子になりたい」と答えました。
私は愕然としました。娘とは何度となく、「女性でも大統領になれる」という話をしてきたつもりでした。ヒラリー・クリントン氏が大統領選に出馬し、当選まであと一歩だったことや、ドイツやニュージーランドをはじめ多くの国で女性がトップを務めていることも話してきました。それなのに娘は、何がきっかけになったのか、「女性は大統領になれない」と考えていたのです。
子どもは8歳、9歳、10歳と成長するにつれて認識の柔軟性が高まり、ジェンダー規範は社会的慣習に基づく部分が大きいと理解する子も多くなります。
社会が女子には「可愛らしさ」、男子には「強さ」を求めていること、そして社会自体がその動きを助長していることに気づき始めるのかもしれません。しかし同時期に子どもの道徳的推論力も発達し始めるため、「道徳的に正しいとされるふるまいをしよう」とも考え始めるのです。
うちの息子は「生まれてすぐの頃」からトラックが好き
「でも、うちの息子は生まれてすぐの頃からトラックが大好きだし、やはり文化の影響ではなく生物的な違いがあるのでは?」と考える人もいるかもしれません。専門家たちも、極めて難しい問題だと認めています。乳児でさえ、「遺伝子」と「環境の影響」を完全に切り離すことは不可能だからです。
とは言え、子どもの言動に性差がある原因は、生物的な違いだけでなく友達や親の影響もあるでしょう。ブラウン氏は「親に買い与えられたおもちゃで遊ぶのが大きな要因」だと言います。周囲の同性の子たちのまねをしている可能性もありますし、与えられたりすすめられた経験のあるおもちゃを「自分の性別にふさわしい」と解釈して引き寄せられている可能性もあります。
子どもにジェンダーの固定観念を吹きこむと、ろくなことがありません。研究によると、男らしく「たくましい」言動をとる男子は、そうでない子に比べて学校活動への関心が薄く、自己評価が低く、数学の平均点が低く、うつの兆候が出やすくなるとわかりました(一説には、たくましくあろうとするあまり、助けを求められなくなるせいだとされます)。
一方、自分の価値は外見によって決まると考える女子は学校の成績が悪く(自分は知性が劣っていると思うのでしょう)、そうでない子に比べてうつの兆候が出やすいそうです。
重要なのは、子どもが持つジェンダーの固定観念が強いほど、女子は男子より劣っている――男性のほうが高い地位についているのは生物学的に優位だから――と考える傾向がある点です。つまり、ジェンダーの固定観念は性差別を助長するのです。
(翻訳/塩田香菜)
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