「パパのほうが稼いでる」と子どもが思い込むなぜ 幼い子が無意識に「性差別発言」をしてしまう訳
社会的カテゴリーを理解する過程で、子どもはよく過度に一般化してしまい、大雑把な固定観念のようなものをつくり上げます。
性別・ジェンダーに関して言うと、「女子は〝全員〟ピンク色が好き(男子は〝全員〟好きでない)」「男子は〝全員〟サッカーが好き(女子は〝全員〟好きでない)」――ひいては、「男子と女子には根本的な違いがあり、男子は〝女っぽい言動〟をとるべきでない」などの考え方です。
育児経験がある方ならご存じのとおり、子どもには〝ジェンダー警察〞的な側面があります。例えば、ある男の子がちょうちょの人形で遊んでいると、他の子から「女の子向けの人形は女子にあげて、男の子向けのおもちゃで遊ばなきゃダメだよ」と注意されていました。
調査の結果、女子よりも男子のほうが「こうあるべき」「こうすべき」と考える傾向がありました。「男らしくあれ」というプレッシャーをそれだけ感じているのでしょう。女子は、そこまでのプレッシャーは感じていないようでした。
私たちの文化では男女の権力格差があるので、「女々しい男の子」よりも「おてんばな女の子」のほうが社会に受け入れられやすいのかもしれません。男性の権力のほうが強いため、固定観念上女性的とされる特徴を持つことは、権力の喪失を意味するのです。
子どもは集団的固定観念を形成する過程で、実在しない差異まで作り出す場合があります。ビッグラー氏に師事する発達心理学者クリスティア・スピアーズ・ブラウン氏は、著書『Parenting Beyond Pink & Blue(ピンクか青かに決めつけない子育て)』で、こんなエピソードを紹介しています。
家族で一番きれい好きなのは夫なのに、娘のマヤ(5歳)は「『男はちらかし屋で、女はきれい好きだから』、私は自分で部屋を片づけなくちゃ」と言ったそうです。
ジェンダー規範をつくり上げる過程で、子どもは周囲を観察し、男性と女性の言動を吟味しています。
目にする例に基づき、「料理をするのは女性」「教師は女性」「サッカーをするのは男性」「消防士は男性」(「男性は料理をしない」「女性の消防士はいない」)などと判断します。テレビを見れば「男子は英雄的で、身体能力が高い」「女子は控えめで、口紅をつける」などの情報を得ます。
女の子は6歳くらいから意識が変化し始める
女子は、幼いときから自分が男子より劣っていると考えているわけではありません。発達心理学者のリン・ビエン氏他が2017 年に『サイエンス』誌で発表した研究では、5~7歳の子どもに「とても頭のよい」人の話を聞かせた後、4人の知らない人(男女2人ずつ)の写真を見せ、どの人の話だと思うかを当ててもらいました。
すると、5歳児は自分と同じ性別(男子は男性、女子は女性)の写真を選びました。これは心理学でいう〈内集団・外集団バイアス〉(自分が属している集団に好意を持つという考え方)です。
ところが、女子の序列意識には6歳頃を境に変化が見られました。女子はこの頃、自分は男子に比べて頭のよさや能力が劣ると考え始めます。先ほどの「とても頭のよい人は誰か」との質問に対し、6歳・7歳の女子は男性の写真を選ぶ確率が高いという結果が出ました(男子は全年齢で男性を選びました)。
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