渋澤:国債も住宅ローン債権も償還日が設けられていますよね。中央銀行が継続的に買ったとしても、一方で償還を迎えるものがあるから、両者が均衡すれば、バランスシートの保有資産として、残高が大きく積み上がることはないでしょう。
でも、ETFやJ-REITには償還日がないので、買い続けているかぎりは残高が積み上がってしまいます。このようなバランスシートって、中央銀行の役目なんでしょうか。いずれ経済が正常化した時に、中央銀行のバランスシートも正常化させるために、これらが売りに出される必要がありますね。その時のインパクトって、どうなんでしょう。
中野:過去数十年にわたって続いたことは、徐々に常態化していくわけですが、それが今、大きく変わろうとしています。まさにターニングポイントなのでしょう。FRBのバランスシートが4倍にまで膨らむなんて、今までになかったことですが、恐らくこれが元の状態に戻ることはない。
これからは、中央銀行がバランスシートを膨らませて、市場に流動性を供給することが、ごく普通に行われるようになるのかも知れませんし、この超低金利もデファクトになるのかも知れません。問題は、それが何を意味するのかということですね。
国家資本主義経済で歪むマーケット
渋澤:官製・国家主義資本経済ということでしょうか。
藤野:総売りの中で官だけが買うという、今の国債市場に起こっていることが、いずれ株式市場にも起こるのかも知れませんね。まさに中央銀行ひとりの爆買い。
渋澤:ただ、GPIFや郵政の財源は国民の資産ということで中身がわかりやすいですが、日銀の場合、よくわかりませんよね。それをやり続けるのは危険な気がします。しかも、ETFやJ-REITを買っているお金って、どうやって調達しているの? FB(政府短期証券)を発行して調達した資金?
中野:いや、FBは為替介入を行う際の資金ですよね。輪転機回してお金を刷って、それをETFやJ-REITの買い付けに回しているだけじゃないですか。
渋澤:え~、紙幣を刷るということは……、お金を増やして、それで株を買ってる。なんか、ますます“きな臭い”感じがしますね。
藤野:ただ、今のところは、ものすごい含み益になっているはずです。
中野:だから、マジックなんですよ。日銀による国債の買い入れは財政ファイナンスだという批判を受けていますが、ETFは現物を買っているわけですから、日銀は株式そのものを買い出したということですよね。このまま買い続けたら、日銀は実質的に日本企業の大株主?
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